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好きにしていいよ

第4章 再開





事情によれば、黒谷敦史が此処を通りかかったのは本当に偶然らしい。

そこへおっさんに追われてる俺が、目に飛び込んできたわけだ。




「…っく、く…あの時の…お前の顔なんて…見ものだったな…」

「笑うな!下手すりゃ障害事件になってたんだからなっ!!」




あれだけ腹が立ってたのに、今は普通に喋れる。

大嫌いだった筈の人物は…

先輩に似てると感じたら、やけに意識してしまう。

途中でコンビニに寄ったりして、

お菓子類や酒のつまみになるような物を、籠の中へ放り込んでいく。




「欲しい物あるか?」

「いい…それより仕事は大丈夫なの?」

「ああ、安心しろ。明日はオフで一日中暇だ」




ニカと笑えば良かったなぁなんて、頭をくしゃりと撫でられる。

…ガキ扱い。

でも最初から、この手に撫でられるのは好きだったんだよな…









「俺んち、此処だから」




歩いてたら、あっという間だった。

見上げれば普通のマンション。

黒谷敦史なら、もっとゴージャスな建物に住んでたと思ったら、至って普通のマンションだ…

俺と寮との距離も近い。

エレベーターに二人で乗り込み、戯いののない話しをする。




「引っ越したばかりでさ。弟と一緒に住んでるんだよ」

「へぇ~あんたて兄弟いたんだ」

「お前よりひとつ年上で、最近こっちに上京してきたんだ」

「そういえば、弟さんは知ってんの?あんたがゲイだってこと…」




俺は家族にさえ言ってなくて。

本当のことを知られるのが、怖くて堪らない。

実はゲイで、
こんな仕事までしてるなんて…




「まあ…最初のうちは軽蔑されたかな…でも今は…やっと受け入れて貰えたて…感じかな…」

「凄いよ…俺は誰かに…打ち明ける勇気なんて…ない…」

「誰だってそうだ…
気にすることじゃない…」




そっと手を握りしめられて、

その手があまりにも優しくて、振り解けそうもない。




「お前…この状況分かってる…」

「なにが?」




エレベーターが向かったのは三階、ドアの前で立ち止まり、

此処が黒谷敦史が住んでる部屋なんだと、ボーっと考えてた。




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