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好きにしていいよ

第4章 再開






マンションから出た後…、




俺を呼び止める声に、ビクリと震えた。

振り返ると先輩がいて、困ったように俺に笑いかける。

あんな醜態見られたせいで、恥ずかしいし俺としては気まづかった。




「ごめん…柏木だよな…すぐには思い出せなかったよ…」

「まさか先輩と黒谷敦史が兄弟なんて、思いもしませんでした。それに俺AV男優やってるんです」




軽蔑しました………?




なんてカミングアウトすると、先輩の表情が真剣なものに変わった。

本人にしてみれば、薄々気づ気づいてたかもしれないけど…




「お前…兄貴のこと好きなの…?」

「はい…好きです」




自分でも驚くほど自然に言えて…。黒谷敦史の前では、素直に言えないのに…




「兄貴は…ずっと、お前のことが好きだよ…」

「えっ…?」




俺には先輩が、言ってる意味が分からなかった。

黒谷敦史とは撮影で共演したのが、初対面だし、




もしかして…




それ以前に会ったことがある?




「先輩は何か知ってるんですか?」

「知りたかったら、本人に聞に聞けばいい」




先輩は何も教えてくれなくて、だから俺もそれ以上踏み込めなかった。

記憶を手繰り寄せてみせても、

AV男優としての、黒谷敦史しか思い浮かんでこない。




「頑張れよ」




そう言ってマンションの中へ消えていく手を振る先輩の後ろ姿を、見えなくなるまで眺めていた。






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