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好きにしていいよ

第6章 初めての媚薬






「ゆうちゃんて、好きな人いるの?」




やっぱり頭の中に浮かんでくるのは、黒谷敦史で、

嫌いだったはずのアイツが、いつの間にか好きになっていて。

いや…

違うかも………

もしかしたら、最初から惹かれてたかもしれない。


ただ俺が、認めなくなかっただけ…




「うん…いるよ…」

「それて、業界の人なの?」




樋口大貴の顔が必死過ぎて、なんだか申し訳ないような気分になってくる。

だって俺が好きになる可能性なんて、少しもないんだよ…?




「ごめん…ゆうちゃんを困らせるつもりじゃなくって…」

「ちなみに俺が好きな人はAV男優で、業界では有名な人だから樋口くんも知ってるかもね」

「えっ…」




何か考え込むように、樋口大貴は俺の顔をずっと見てた。

俺…変なこと言ったかな?




「もしかして、ゆうちゃんの好きな人て…黒谷敦史…?」

「えっ…なんで…分かったの?」




きっと、

俺は間抜け面をしていたに違いない。

意図も簡単に言い当てた樋口大貴を、俺は不思議に思ってた。




「かなり有名な人て…ゆうちゃんと共演してたし…黒谷敦史しか思い浮かばなかった…」




唖然とする樋口大貴…

何度も好きだと告白された。

だけど俺は、黒谷敦史の気持ちに応えていない。

本当は彼の胸に飛び込んで好きだて伝えたいのに、

それが出来ないのは、俺が臆病で弱虫だからだ。




「うわー…戦意喪失…俺なんかが敵うはずないじゃん…」




シュンとうなだれる姿が、捨てられた子犬みたい。

悪いと思っていても、なんだか可愛くて笑ってしまう…





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