テキストサイズ

月明かりの追憶

第1章 はじまり

「マーズ、しっかりしろ」

「すっ、すみません…たい…し‥ガクッ」



それは前世の健永がこと切れる瞬間だった、それだけじゃない。



「カイト、おい」

「プ…リン‥セス…を」

「ジュ…ピ‥俺に…構わず行け‥ハァハァハァ」

「トカシ」



次から次へ命を落としてく、前世のニカや宮田。



「セレネさまあぁー」

「来てはだめ、ジュピ」



グサッ!



「ジュピいぃーっ」



目の前で息絶える裕太の姿を見たとき、俺の中で何かが叫び声を上げる。

やめろ、やめてくれぇー



「私がいなければ」



聞こえて来た、プリンセスの声。



「私さえ命を絶てば」



違う、そうじゃない何か手があったはずだ。



「ごめんなさいエリ…オ」



おっ、俺は、このときの自分は何をしていたんだよ?ただ見ていただけなのか。

そう思ったとき。



「お前は先に魔物にやられてしまっていたんだ横尾さん」



ミツ?



「あいつらが留守の間に宮殿が襲われ」



まさか!

ふと前を向くと、俺のことをジッと見つめているミツの瞳がそこにはあり。



北「ふっ」



どういう事?



北「じゃ横尾さんが俺のポッキーを護ってくれるの?」



ポッキー?えっ、ちょっと待って。

プリンセスは、犬に転生してしまったってわけ。



北「クククッ」



意味深な笑みを浮かべているミツ。



北「だから何も心配はいらない、これ以上クビを突っ込むんじゃねぇよ」



言っていること、意味不明だよ。



北「今、見た光景を繰り返したくはないだろ」



そりゃ、当たり前さ。



北「なら、あいつらには黙っておいてくんね」



俺は、こいつがポッキーを連れて来たのが意図的だった事に気づく。

だけど本当の意味は分かっていなかったんだ、ミツが俺達の前から姿を消すまで。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ