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月明かりの追憶

第3章 魔の刻 再び

・北山side

ここか、ふーん ただの一軒家にしか見えないけどな。

ピンポーン、呼び鈴を鳴らすとガチャっと扉が開き。



岬「やぁー久し振り、よく来たね ニコッ」

北「藤ヶ谷はどこ?」

岬「取り合えず上がって、んっ?なにそのケース」

北「ポッキーっす」

岬「ポッキー?」

北「俺の犬」

岬「へぇー」

北「ダメなら置いて来るけど」

岬「いや別にいいよ」

北「なら、おじゃましまーす」



バタン!

なんの変哲もない普通の家に見える、俺はキョロキョロと辺りを見渡した。



岬「ここにはいないよ」

北「じゃ、どこで?」

岬「そんな顔をしなくても後で会わせてあげるから」



こいつ、何を考えている?



岬「その前に何か飲む?」

北「いや、いい」

岬「コーヒーでもどう?」

北「いいって言ってるじゃん」



すると―



岬「忘れた?俺の言うことをなんでも聞くっていう約束」

北「ぁ…‥」



そうだったわ、フッ



岬「はい、ニコッ」

北「‥‥‥」

岬「何も入ってないから」



どうだかな、信用はできない。



岬「じゃこうすればいい?ねっ、クスッ」



そう言うと岬は、俺の前に出したカップと自分のをチェンジして先に口をつけ。



岬「ほら飲んで、ニコッ」

北「‥‥‥」



仕方なく―



北「ゴクン、うまっ」

岬「だろ?特注だし、これ」

北「はっ?」

岬「ニヤッ」



ヤバいと思ったときには、既に遅かった。



岬「俺が何もしないわけないじゃん、クククッ」

北「なっ!?」

岬「ふふふ、あははっ」

北「おまっ、クッ」

岬「やっと手に入れられるんだ好き勝手にやらせて貰うよ、ニヤッ」

北「‥‥っ」



とたん意識が遠退いてく、こいつの不気味な笑い声が脳裏に響き。

ぽっ、ポッキー

倒れ込む寸前に、足元のケージへ手を伸ばし。

に…げ‥ろ…クッ

飛び出すポッキーの姿を確認してから、俺は意識を手放した。

そして、奈落の底へと足を踏み入れてしまう事となる。

藤ヶ谷 太輔という、何よりも大切なシンメを人質に取られ。

それは、あの悪夢の宴の再開でもあったんだ。

狂気という名の―




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