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月明かりの追憶

第5章 迷走する恋

・北山side

それは、泣き疲れてボーッとしていたとき。

“ミツ、みつ”

えっ、ニカ?いや待てここ俺の部屋だし、あいつの声が聞こえるわけないじゃん。

気のせい?

だけど気になる、なんだか悲痛な声をしていた。

気になりだしたら、どうしようもなく嫌な予感が脳裏を過ぎり。

いても立ってもいられなくなって、横尾さんの携帯へ掛けたんだ。

そしたら、なんでこいつが出るんだよ。



北「あ…ぁ‥横尾…さんに代わって」

藤「なに?俺じゃ不都合な事でもあるの」

北「違う…けど‥その」

藤「あぁー分かった今からそっちへ行く」

北「へっ?」

藤「へっじゃない待っていろ会って話を聞くから」



じょ、冗談じゃね今 会ったら泣いていたのバレバレじゃん。

うわっ、眼なんか真っ赤に充血してるしよ、どうすんべ。

アタフタしていたらチャイムが鳴り、慌ててサングラスを掛け玄関へ向かう。

ガチャ!



藤「北山?」

北「…あい」

藤「なにやっているの」

北「なんにも」

藤「ふーん、まっいいや」



いいのかよ、突っ込め。



藤「あがるな」



突っ込んで下さい、藤ヶ谷さーん。



北「はぁ」

藤「ぷっ、クククッ」



やっぱり俺だけ独りよがり、いや こいつ今 笑ったよな?うん笑った。



藤「で?どうして嫌な予感がしたわけ」



が、しらーっとした顔をして俺の隣へ座りそう聞いてくる。



北「‥‥‥」

藤「北山?」

北「声が…したんだ」

藤「ニカの?」



コクンと頷くと、顎に手を置き“んー”っと考え込む藤ヶ谷。

その横顔が、カッコいい。



北「ハッ、今はそれどころじゃないだろ」

藤「んっ?」

北「えっ?あっ、なんでも…ない」

藤「ぷっ」



俺、声に出てたか?アハッ



藤「もしニカに何かあったんだとしたら狙いは」

北「俺だな」

藤「つまり向こうから何かアプローチがあるはず」



それを待つしか。



藤「今夜はここに泊まるから」

北「はっ?」

藤「当たり前だろ北山にしか聞こえないんだから傍にいるしかないじゃん」

北「‥‥‥」



俺の心臓がもたないんだよ、なーんてこと言えるわけがなく。

藤ヶ谷との二人っきりの夜は更けていく。




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