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千年の花嫁

第13章 戦いの火蓋

五「いろいろあってね素直になれなかったんだけど」



子供が生まれたら、みんなと一緒に暮らそう。



五「そう、あいつに言うつもりでいたんだ、ニコッ」

子「ホントそれ?」

五「うん」

子「僕達のお母さんになってくれるの?」

五「俺なんかでよければ」

子「やったぁーっ」

子「みんな喜ぶ」

五「んふふっ」



それから―



子「ねぇ、お腹に触ってもいい?」

子「ズルい僕も」

子「お兄ちゃんだよ、お兄ちゃん」

子「早く出ておいでぇ」

子「みんな待ってるからね」



郁人…

俺達の子は、この世界のどの妖狐よりも幸せだね。

こんなにも愛されて。



五「さてと、そろそろ帰ろうか?」

子「えぇーっ、もぉ」

五「夕方だよ日が暮れちゃう」

子「もう少し一緒にいたい」

五「困ったなぁ、そうだ!じゃ送ってくよ」

子「うん」



このとき俺は。



五「夕焼けこやけで日が暮れて」

子「丸い大きなお月さま」

子「お手て繋いで皆帰ろ」

五「カラスも一緒に帰りましょ」

子「あはははっ」



塚ちゃんとの約束をすっかり忘れてしまい。



「ただいまぁーっ」

「こら、お前らどこへ行ってたんだ」

「ごっ、ごめんなさーい」

「こちらの姫さんは」

「郁人兄ちゃんのお嫁さんだよ、フフフッ」

「これはこれは」



それが―



「わざわざ送って下さり有り難うございました」



取り返しのつかない出来事を招く結果になろうとは。



子「これプレゼント」

五「笛?」



思っていなくてさ。



妖狐「犬笛をご存知ですか?」

五「はい」

妖狐「それと同じで吹いても他の生き物の聴覚には聞こえませんが」

子「僕たちには聞こえる」

子「なにかあったら呼んで、ニコッ」

子「すぐ駆けつけるから」

五「ぁ…‥」



ありがと、フッ

心に響く温かな言葉、郁人これもお前という存在がこの子達に与えた影響なのか。



「お気をつけて」



帰り道、そんなことを考えながら俺は歩いていた。

ガサガサ、ガサッ!

その後ろから近づいて来る気配に気づかず。




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