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千年の花嫁

第13章 戦いの火蓋

藤「よし、行こう泉へ」



妖狼の住まう林の奥、そこには青く澄んだ泉があり。



玉「へぇ初めて見たけど」

千「綺麗」

橋「キラキラしている」

ニ「ここが」

戸「転生の泉」

千「じゃ塚ちゃん」

塚「うん」



ジャブ、ジャブ!

郁人を抱いて、千賀と塚ちゃんの2人がその中へと入ってく。



五「郁人…クッ」



その姿を、想いを押し殺すかのように歯を食いしばり見つめている五関。



塚「河合、心配しないで俺が、ごっちと生まれて来る子供をしっかり護っていくから」

千「俺も及ばずながら力になります安心して安らかに眠ってて下さい」

塚「そして人間になったら、また」



“いつか会おうね”誰もが心の中で呟いた言葉。

プカリプカリと水面に浮いている郁人の身体が、徐々に沈みかけ自然と俺たちは合掌する。

と、そのとき!ザハーン

聞こえた水しぶきの音に、慌てて眼を開けると。



横「五関、よせ戻るんだ」



五関!



五「郁人、郁人おぉーっ、俺も行く連れてって郁人」



ザブッ、ザブッ!



北「戻れ五関いぃーっ」

戸「ダメだってぇ、お腹に赤ちゃんがいるんだから」

藤「五関!」



太輔が、横尾さんが追いかける。



五「放せ放せってば郁人の所へ行くんだ郁人おぉー」



バシッ!



藤「しっかりしろ五関」

五「やだっ、藤ヶ谷やだ」

藤「お腹の子を道連れにするつもりか」

五「くっ…ヒクッ」

藤「その子が生まれてくるのをどれだけあいつが楽しみにしていたか、一番よく分かっているのは五関お前だろ」



そうだよ五関。



横「産んでやれよ、なっ」

五「よっ、横尾…クッ」

横「それが何よりも郁人が喜ぶことなんじゃないのか 」

五「うぅ…ぁ‥ヒック」



その姿に再度、大切な仲間を失ってしまった悲しみが襲って来る中。



藤「帰ろ俺達の場所へ」



既に辺りは真っ暗で、それぞれが手を繋ぎ。

五関の隣には、塚ちゃんがピッタリと寄り添いながら俺達は家路につく。

闇夜の中ー




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