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千年の花嫁

第19章 愛する人へ

五「塚…ちゃ‥ヒィーヒィーッ」

塚「ごっち、ごっちぃー」

妖狼「くっ…やる‥な…人‥間…ハァハァハァ」

五「おま…え‥だけ…は‥許さねぇーっ」



ズブズブズブ!



妖狼「ぐはっ…はっ‥ぐ…ふっ‥くうーっ…ガクン」



ドサッと倒れ込んだ妖狼。



五「やっ…た‥郁人…やっ‥ガクッ」

塚「ごっち、ギュッ」

五「塚…ちゃ‥俺…やっ‥たよ…ヒィーヒィーッ」

塚「分かった、分かったからもう」

五「郁…人の‥仇…とっ」



喋らないで、クッ



藤「五関!」

塚「藤ヶ谷、ごっちがぁ」

五「ヒィーヒィーッ」



苦しそうに息をするごっち。



藤「今、血を止めてやる」

塚「傷口…は‥ヒクッ」

藤「無理だ俺は神じゃない、が痛みなら消せる、クッ」



藤ヶ谷は悔しそうにそう言うと、ごっちの首へ手を当てて。



藤「部屋に運んでやれ郁人の匂いがする部屋へ」



そんな中、周囲では妖狼と妖狐が命を削りあい。



藤「健永、みやを俺んちへ連れて行け」

千「分かった」

藤「タマ」

玉「許さない、絶対!うっおぉーっ」



バリバリバリ!

玉森の気迫が空気を割り、怒りが神通力に拍車を掛ける。

“ぐわぁーっ”

“キャンキャン”

“ぐはっ”



横「バカな妖狼どもめ俺達を二度も本気で怒らせやがって!キッ」



銀狐 横尾の金色の瞳が、ギラギラと輝く。

“んぎゃあーっ”

“あっ、頭が割れる”

“うぐぐっ、ぐはあっ”

そして、藤ヶ谷の声が全領域に再び響き渡ったんだ。



藤「こいつらは俺達の仲間を殺しただけじゃなく姫に瀕死の重傷を負わせた容赦はいらない1匹たりとも帰すんじゃねぇ」



“おぉーっ”



五「…っ、ハァハァハァ‥郁人…郁‥会いたい…」



俺の腕の中で、河合の名前を呼び続けるごっち。

河合、河合 頼む、まだ連れてかないで、玲流にはごっちが必要なんだ独りにさせないで、お願い。

俺は、ただ必死で叫んでいた消え行く命を引き戻そうとするかのように。




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