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千年の花嫁

第3章 妖狐の一族

それは、妖狐の世界で語り継がれていた伝説。

ひっそりと息を潜め暮らしていた妖の一族。

狐・狼・虎・鳥など様々な形態が自然と共存し。

しかし、その生活を脅かし始めたのは人間だった。

やみくもに狩りを行い。

妖狐は1匹の雌の狐によって血族を繋ぐ一族、つまり蜂や蟻のように女王の存在があってこそ子供は生まれてくる。

そして一度だけ雌は女狐を産み落とし、自らの生涯を閉じるらしい。

が、こともあろうに人間は妖狐の雌を食えば不老不死になれるなどというバカげた考えのもと女狐を殺してしまったんだ。

このままでは血が途絶えてしまう。

それで思いついたのが今のやり方ってわけ、人間の女にしないのは自分たちの精子では受精しないからなんだって。

己の血を神通力で性転換薬に変え飲ませることで、妖狐に合う女体にし受精させて孕ませる。

以来、彼らはこうして血族を繋いで来たらしいんだ。

悪いのは俺ら人間だった。

妖狐は、ただ平穏に暮らしていたかっただけなのに。

先祖のしてしまったことの責任が自分たち子孫に降りかかって来て、俺達は今こうしてここにいる。



藤「お前らの中から雌が生まれて来るのは奇跡に等しいからな、フッ」



金の天狐、藤ヶ谷は悲しそうにそう言った。

出来ればこんなことはしたくないんだと、連れて来られた全ての人間が自分達を受け入れてくれるわけではない。

気が狂ってしまったり自ら命を絶つ者も少なくないと、それを見るたびに心が痛んだとも。

妖狐は愛に溢れた優しい一族だった、彼らの名前が何よりの証拠。

姓は産んでくれた親のもの、名もその親から付けて貰ったものだという。

百年、千年と歳月が経っても忘れない為に。




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