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千年の花嫁

第5章 真の伝説とは

「太輔、太輔えぇーやっ、嫌だぁ、おかしくなっちゃうよおぉーっ」



中で何が行われているのか、見なくても見当がつく。



「俺のせいだ俺の、クッ」



あの少年は、天狐に陵辱されているんだ。



「ごめん…ごっ」



違う太輔のせいじゃない、こんなことをするあいつが悪い。

それからも少年への陵辱は毎日1日に何回も続き、8日くらい経った頃だろうか?



「うっわあぁーっ」



部屋から悲鳴のような声が聞こえ。

なっ、なんだ今のは!?

暫くして、周囲がバタバタと慌ただしくなり。



「たっ、大変です長」



隙を見て少年が逃げ出したことが分かる。



「どこだ?どこへ行った」



そして、そこには必死で行方を捜す太輔の姿があったんだ。



「頼む早まらないでくれ俺が支える親父が何と言っても傍にいてやるからさ」



ダダダッ!



「若、どうやら林の中へ入ってしまったようです」

「なに!」



が、途端それを聞き太輔の顔色が変わる。



「そっか、あそこへ行ってしまったのなら諦めるしかないの」

「見捨てるのか親父」

「仕方ないであろう妖狼とは争いたくないのでな」

「嫌だ俺は」



ダダッ!



「若、危険ですお戻り下さい」



林の奥、狼たちの鳴き声が響き渡っている。

そこで―



「こいつに手を出すなぁ」



怒り狂ったように戦う太輔の姿は、眩いばかりの金色に光っていた。



「金狐、ここは我らの領域ぞ!お主こそ立ち去れ」



そうやってどのくらい戦っていたのだろう、俺が次に見た光景は。

傷だらけの太輔が、血まみれになっている少年の身体を抱きしめ泣く姿だったんだ

うっ、嘘だ…こんなの‥



「太…輔‥」

「なん…だ‥ヒクッ」

「大…す‥き」

「バカこんな時にまで」

「ま…た‥あ…い‥た…い‥っ…ガクン」

「くっ、うわあぁーっ」



こんな結末ってない、クッ

それから、太輔は少年を抱き上げると青く澄んだ泉のような場所へと行き。



「生まれ変わったら稲荷村には絶対に来るんじゃない」



そう言って…

えっ、ちょっと待て今なにをした?俺の見間違いじゃないよな。

少年の亡骸を泉の中へ沈める太輔、そこで目が覚める。

あれは、どういうこと?

灯りのない、その空間で―




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