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千年の花嫁

第7章 希望の花嫁②

ニ「他に…いても‥いっ」

横「なにが?」

ニ「一番…じゃなくても」

横「俺には、お前が一番だよ」

ニ「そっ、傍にいてくれなきゃ…やだっ‥ヒックン」

横「これからは離れず傍にいる、だからもう泣くなって」

ニ「だったら、クッ」

横「んっ?」



こんな切ない声で話すニカは初めてだわ。

でも痛いほど想いが伝わって来て俺の心も締めつけられてしまう。



北「行こう太輔」

藤「いいのか」

北「あぁ」



今は会わない方がいい、そう思って扉から離れた次の瞬間!



ニ「抱いてくれ」

北「‥‥っ」



ダダッ!



玉「ミツ、ガヤ早くミツを追いかけて」



その言葉を聞き、思わず走り出してしまう。



藤「待つんだ独りで行くんじゃない」



ニカが自分から妖狐を求めた、あのニカが クッ



ニ「本当に妖狐なんて奴がいたらすっげーや、クスッ」



嘘…だ‥

ショックとかじゃなく、自分はなんの為にここへ来たんだろう。

そんな思いが、切なさを沸き上がらせ堪らなくなり。

ギュッ!



藤「捕まえた、ハァハァ」

北「…太‥輔」



そしたら太輔が、後ろから抱きしめて来てよ。



藤「可愛い弟を取られちゃった気がして悲しくなった」

北「違う、そんなんじゃ」

藤「じゃなに」

北「俺は俺はニカを助けたくて、なのに クッ」

藤「心ってのは思いもかけない感情を引き起こすものさ、あいつだって予想もしていなかったんだろ、だが」



気づいてしまった、認めてしまったらもう後戻りはできない。



藤「帰るよ、ニコッ」



太輔の笑顔が「俺がいるだろ」そう言っているように見え。



藤「腹減ったな飯でも食うか、フッ」



繋がれた手から、優しさが伝わって来る。



北「…うん」



でもその温もりを感じながら俺も、この腕の中で愛されたい。

そんなふうに思っている自分に気づき。

そう、横尾さんの言う通り初めて声を聞いた日から。



藤「どうかした?」

北「いや、なんでもない」

藤「ふっ、ニコッ」

北「ドキッ」



俺は、太輔に惹かれていたんだ。

妖狐の長、金狐に―




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