好きにさせて
第15章 決断
重い言葉や
『親が選ぶ』とか
いつの時代の話やねん
そう笑い飛ばしたかったけど
俺にそんなことは
でけへんかった
理由は他でもない
茜が離婚に至った経緯を
聞いたからや
結婚当初
茜と前の旦那の姑とは
なかなかうまくいってたそうや
そやのに
病気がわかったころから
ギクシャクしはじめ
子宮を摘出した時には
ほとんど見舞いにも
来んかったらしい
新婚当初
早く孫の顔が見たいと
言われてたのに
なかなか妊活しなかったことも
厳しく叱られたそうで
茜の母親にまでも
色々と愚痴をこぼされたそうや
「俺かて
茜の親父に
まだ選ばれたわけやないで?」
「そうだけど
尚は大丈夫よ」
「なんでや?
俺かてひとりっ子や。
できたら養子になってくれる
男がええやろ」
「あきらめてるよ、きっと。
前だって
ひとりっ子の人だったし。
それに…」
「ん?」
「こんな私と結婚してくれるなら
誰でもいいと思ってるよ、きっと」
「こんな私とか言うなや」
「…ごめん」
暗い顔をする
茜の頭を引き寄せて
優しくキスをすると
茜は軽く微笑んで
俺に抱きつこうとした
けど
椅子に座ってたら
あんまりうまくいかへん
「あっち行くか?」
「うん」
俺は茜を
奥の小上がりに誘った
「じゃあ、お酒運ぶね」
「ほなテーブル出してくるわ」
「うん」
酒と肴を
奥まで運び
俺と茜は
狭い小上がりに座った
「尚…」
俺が
壁にもたれかかって座り
茜をその前に座らせて
抱きしめると
茜は振り向いて
俺にキスをせがんだ
「…っ…くちゅ…」
甘いキスは
なかなか終わらず
酔ってるのかなんなのか
茜の身体は熱い
俺まで
クラクラしそうになった
その時
茜が降参して唇を離した
「…っん、尚…」
「ん?」
「おかしくなっちゃう」
「せやな、俺もやばかった(笑)」