好きにさせて
第15章 決断
子供の話や
病気の話をする時
茜は決まって
俺に寄り添う
不安からなのか
なんなのか
それはよう分からんけど。
「なぁ、茜」
「ん?」
茜は
俺に抱き寄せられたまま
甘える子供のようや
「結婚もこれからのことも
辛い話してるんとちゃうで?
俺らがこれから
どない楽しく生きて行くか
っちゅう話や」
「…ん」
「茜が辛い生き方は
絶対選ばへん。
せやから
不安がらんでええからな」
「そう…だよね。
うん、ありがと…尚」
そらから茜は
また俺に
キスをせがんだ
それはまるで
精神安定剤のように。
中学の頃
あんなに頼るのか苦手やったのにな
今、腕の中におる茜は
まるで別人のようや。
せやからこそ
茜のためにも
俺は
茜と結婚したいねんけど。
キスの後
狭い部屋で
俺と茜は寄り添い
時々酒を飲みながら
…キスをしながら
色んな話をした
俺の親に
茜の不妊を内緒にしとく
というのはどうか
とか
まずは
俺が茜の親父さんのとこに
挨拶行った方がええやろうか
とか
もしも
結婚することになったら
どっちかの親と
同居するのかどうか…とか。
どれもこれも
難題ばかりで
何一つ
どうすればいいのか
決まりはせえへんかったけど
茜の気持ちだけは
よう分かって
俺はある程度満足やった
それから
茜の気持ちには
一本芯が通ってて
それを曲げることはなさそうや
いうことも分かった
その曲げない気持ち
っちゅうのは
『不妊を隠さないこと』
例えば
俺が
茜を両親に紹介するなら
そのことをちゃんと
説明して欲しいそうや
あとで分かるほど
罪なことはないと