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桜花楼の恋

第7章 募る想い

・北山side

藤ヶ谷の弟だというタマが帰ったあと。

俺は何故だか突然寂しさに襲われてしまう。



北「くっ」



あいつが行く先には藤ヶ谷がいるんだ。

だが、そこに自分は向かうことさえ出来ない。

籠の鳥とはよく言ったもんだわ、フッ

その笑顔も唇も…

もう向けられ触れられる事はないのか?

ハッ、なにを考えているんだ俺は。

違う、違うってば会いたいなんて思ってねぇよ。

の…はずなのに‥クッ

くっそ、どうして目から涙が出てくる。

温もりが欲しい。

抱きしめられ腕の中で囁かれ微笑み合い、時には言い争いもするけれど。

それでも、クッ

安心していられた、お前と一緒にいると。

閉じ込められた中であっても不安いっぱいだった心はいつの間にか。

それは認める。

しかし、このまま傍にいてくれたなら。

自分は何人もの客の相手をしなくて済む。

そんなふうに都合よく思っていた自分もどこかにいたのかもしれない。

いやそうじゃなく俺はもしかすると、あいつのことを。

それはない、ならこの気持ちはいったい何なんで?

分からない、クッ



北「藤っ…ヶ谷‥の…バカ‥やろ…クッ」



なんで俺が、お前の事でこんなに心を乱されなければならねんだわ。

お前が…

おまえが俺のこと、こんなふうにしたんじゃないの。

なのにさ―

どうして傍にいねんだっつうの、クッ

ふっ、情けないわ。

自分がダメになりそうなのを誰かのせいにしているんじゃ、お先真っ暗だし。

しっかりしろ 北山宏光。

でも苦しくて堪らないどうしようもないくらいに。

どうすれば抜け出せる?

今の苦しみ辛さから?いったいどうすれば、クッ

それすら分からない自分に腹が立ちながらも俺は。

ただ無駄に、日々を過ごすことしか出来なかった。

月が変わるまで━




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