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桜花楼の恋

第8章 明かされた正体

横「郁人お前は問屋の若旦那だろ?そんなに気が短いと客が逃げてしまうよ」

河「大きなお世話」

横「クスッ」



それから横尾は北山の方へ向きを変えると。



横「もう一度聞く今一番会いたいのは誰?」

北「くっ」

横「すでにバレてしまっているんだ隠す必要はないんじゃない」

北「んなつもりは」

横「だったら言えばいい俺が勝ったらなんでも願い叶えてやると約束したろ」

北「マジ…だったのか」

横「侍とは嘘つかないものさ」



が、それを聞いた北山は。



北「よく言うわ、あいつは嘘ばっか言ってたじゃん」

横「あいつって誰」

北「あいつはあいつに決まってるだろ」

横「それじゃあ分からない、ちゃんと名前を言わなきゃ」



その身体が、再び小刻みに震え。



北「ふっ、藤ヶ谷…ヒクッ」



瞳から涙がポロポロと流れ出す。



河「おまえ」

五「認めたんだ自分の気持ちを」

千「宏光」

ニ「それがわったーの目的だったってわけ」

塚「また随分と思いきったやり方を」



本当だよ。



横「太輔は嘘をついていないよ ニコッ」

北「言った、キッ」

横「どんな?」

北「自分に惚れさせるとか言いやがって俺が惚れたら傍にいないんじゃなんの意味もない」

横「はっ?」

五「えっ」

戸「それって」

塚「嘘とは言わないんじゃない」

ニ「どちらかと言うと」

河「本当の事じゃんなぁ」

北「…っ、カァーッ」

千「うわっ、宏光が照れてる可愛いぃーっ」



とたん、自分の言った言葉に顔を真っ赤にする北山を見て。



横「ぷっ、あはっ、こりゃいいや」



横尾は大笑いをし。



横「太輔が溺愛してしまう理由がよく分かったよ」



けど、その藤ヶ谷とは一体どんな知り合いなわけ?

誰もが聞きたい事だった。



横「会いたい?」

北「コクン」

横「はっきりしな」

北「あっ、会いたいに決まってるじゃん」



北山━



北「会いたい藤ヶ谷に会いたくて仕方がねんだ、ヒック」

戸「分かった、もう分かったから」



泣かないで、そんな切ない顔をして俺まで涙が出ちゃうだろ。

それは、初めて見る北山の本心をさらけ出した姿だったのかもしれない。



北「藤ヶ谷…藤ヶ谷あぁ」



意地も、男としての誇りも捨てた生身の人間としての。

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