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桜花楼の恋

第9章 甦った記憶

・北山side

それは遙か昔、俺が子供だった頃の光景。

確か歳は6・7才くらい。



母「宏光あまり遠くへ行ったらダメですよ」

北「はぁーい」



まだ母さんがいて、うわっ懐かし。

この道、真っ直ぐに行くと谷みたいな所があってさ。

すっかり忘れてた、フッ

龍也が生まれ続けて瑞希ができ、ちょうどそのあたりから母さんが体調を崩して。

俺は、必死で親父の手伝いをしながら生活を支えていたっけ。

だけど気がつけば、人の良い親父は騙され借金を背負ってしまっていてよ

母さんが死んでからは、まるで後を追うかのようにポックリと逝ってしまい。

それから兄弟3人肩を寄せ合いながら暮らして来た。

谷…か‥

ふと見上げれば、そこには藤の花が見え。

そして━

あっ、あれは子供!?それも見た事のない頭をしている。

崖にぶら下がるように…



「助けてぇーっ、怖いよ!父上、母上ぇーっ」



蔓かなんかに必死で掴まっている姿に、思わず俺は。



北「その手を離したらダメだ今いく」



ダッ!



「ふっ、うえぇーん!わっ落ちちゃうぅーっ」



んだめだ間に合わないかもしれない。

ドスン!くっ、“北…山‥北山”誰かが俺の名を呼ぶ声が聞こえ眼を見開くと。



「ぁ…ありがと」



自分の身体の上に、その子は乗っかっていて見事なオカッパみたいな髪。

だが、どこかの侍の子なのか綺麗な袴と羽織を着ていて。



北「良かったな、ニコッ」



そう言うと、嬉しそうに頷いた。

んっ?なんだ、この不思議な感覚は前にも同じような事があったような。




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