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桜花楼の恋

第10章 切なき逢瀬

・北山side

藤ヶ谷と繋がっていると、今までの苦しみが嘘のように晴れて行く。

だから━



北「話してくれないか」

藤「んっ?」

北「全部、本当のことを」



もう俺は、自分の気持ちを否定したりはしない。



藤「どこまで知っているの?」

北「お前が尾張の若君でタマが宮田の弟だって事」

藤「あの兄弟を引き離してしまったのは俺だ、クッ」

北「後悔しているわけ?」

藤「するくらいなら今どうしたらいいのかを考える」

北「藤ヶ谷、フッ」

藤「ニコッ」



そう言って笑みを浮かべた顔を見て思う。

これだ、こんな こいつに俺は惹かれたんだわ。

何もかも分かっていて、それでもなお自分の意志を貫き通そうとする強い瞳に。



藤「前に話しただろ?」

北「もしかして」

藤「芝居小屋で出会ったのは当時まだ子供だった頃の宮田、そして」



そこにタマがいた。



藤「羨ましかったのかもしれないな、フッ」

北「なんで?だって殿様ってのは」

藤「父上は母上ひと筋で、そんなところだけは似てしまってよ」

北「下に、できなかったのか?」

藤「実は今の母上と俺との間に親子の繋がりはないんだ」

北「はっ?」

藤「タマも知らない事さ」



前の奥方との間に出来た子。



藤「俺が生まれてすぐに流行り病で死んでしまったらしい」

北「で、母親ってのは?」

藤「大名の中ではよくある話し勝手に相手を決められ娶(めと)らされる」

北「んだが他に惚れていた女がいた、そういうこと」

藤「まぁ、フッ」



それが今の━




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