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桜花楼の恋

第11章 心の架け橋

・藤ヶ谷side

家臣「若君がいらっしゃいました」

父「通せ」



北山との激情の一夜が明けた数日後。



藤「何用ですか?」

父「人払いを」

家臣「はっ、かしこまりました」



俺は父上に呼ばれる。



父「幕府より正式に跡目相続の件はなかったことにとのお達しが来た」

藤「ふっ」

父「上様の後継者は紀州の国松君に決まったそうだ」

藤「御歳6歳の!?」

父「勿体ないことをしおって」

藤「何をです?」

父「お前の器なら世に名を残せたものを」

藤「そのような事したいとは思いませぬ」

父「ふっ、強情っ張りが」



俺には、なんの意味もない。



父「が、だからと言って何事もなかったかのように江戸にいるわけには行くまい」

藤「尾張に帰れと?」

父「お前が男色であることは江戸城の老中方すべてに知れ渡ってしまった」

藤「しかし国へ戻っても」

父「ほとぼりを冷ますには、それが一番であろう」



やはり、そう来たか。



父「太輔、約束を果たして貰うぞ」

藤「それは、どういう?」

父「忘れたか?お前はあのとき己が男好きであるかを確かめたいからと郭へ行くことを望んだ」

藤「はい」

父「さすれば嫁を取ると」

藤「‥‥っ」

父「将軍跡目相続はご破算になっても主(ぬし)が尾張の嫡子であることは不動のもの」



そんなの、今さら言われなくても分かっている。



父「その役目から逃れる事は断じて出来ん、それを肝に命じておけ分かったな」

藤「くっ」



出発は10日後━

そしたら俺は、きっと何処かの大名の姫君と見合いでもさせられるのだろう。




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