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桜花楼の恋

第12章 隠された胸の内

・二階堂side

それは━

今夜は俺がミツを買う日、がその前にわったーにでも会いに行って来よう。

そう思い、ちょうど河合の若旦那の店の前を通ったときだった。



福「お気をつけて、お帰り下さい」



見たこともない侍が、中から出て来たのは。



ニ「‥‥っ」



キリッとした瞳、しなやかな体つき。

ドッキン、心臓が音を立てて高鳴る苦しいくらいに。

だっ、誰だ?あれは。

気がつけば、無意識に足は動いていて後をつけている自分がいてさ。

と、その侍はクルッと後ろを向き髪の毛がふわっとなびいた姿に再び。

ドキン!



侍「俺に何かよう?」

ニ「ぁ…いぇ‥」

侍「ふっ」



わわわっ、どうしよ。



侍「このまま一緒について来たら迷子になっちゃうよ」



そう言って、笑った表情に胸がキュンと締めつけられる。



侍「お家へお帰り、ニコッ」



ボーッとしていたら。

あっれ?いない、どこ行ってしまったんだろ?うわっ、消えちまった。

が、これが俺の叶わぬ恋の始まりだったんだ。



北「どうしたんで?ニカ」

ニ「んっ?あぁ、ハァ」

北「???」



そうだと気づいたのは、次に会えたとき。



ニ「なぁ、ミツ」

北「なに?」

ニ「心臓が、こうキュンってなった事ってある」

北「はっ?」



ガヤのことを知ったときにも驚いたけど、この侍。



北「おまえ誰かを見てそうなったりしたんじゃないよな」

ニ「えっ」



それに勝るとも劣らない、凄い家柄の奴だったんだ。



北「惚れたやつでも出来たん?フッ」



自分がそうなって、改めて痛感したミツの気持ち。



ニ「まだ分からない」

北「んだか、でもそうなら独りで抱え込んでないで話せよ」

ニ「う、うん」



そして、それぞれが切ない想いに身を震わせている中で冬の季節は新たな年を迎える準備をし始める。

そこで待っているのは絶望か、それとも希望の光か?

予想もつかないままに━




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