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桜花楼の恋

第2章 最初の試練

番頭「宏光、お前の買い手が決まったぞ」



いよいよ、その時を迎える。



番頭「喜べ相手は、お侍様だ」

北「‥‥‥」

番頭「いいか逆らわず大人しくされるがままでいるんだ気に入って頂けたら上手くいけばお得意さまとなりすぐにでも太夫の道が開ける」



侍か、フッ

いったいどんな奴だ、こんな俺を抱きたいなんていう物好きはよ。



番頭「さぁさぁ、こちらでございます足下にお気をつけ下さいまし」



番頭が部屋へ招き入れるまで、俺は自分の部屋でそいつが来るのを待っていた。

既に敷かれた布団の脇で、そして障子にその影が映った瞬間に頭を下げる。

トッツーに教わった通り。



番頭「では御ゆるりと存分にお楽しみ下さいませ」



が、傍で気配を感じたとたん心臓が疾風の如く高鳴ってしまい。

自然と身体は小刻みに震え…

んやだ、やっぱこんなことはしたくない。

そう思った次の瞬間にグイっと、いきなり顎を持ち上げられたかと思ったら。

チュッ!



北「んっ、ビクッ」



なっ、嘘だろ!?



戸「俺たち男娼は本気で惚れた相手にしか唇は許さない」



相手の顔を見る余裕すら与えられず、俺は。



戸「それは客も承知の上、だから許してしまったら」



初めから、唇を奪われてしまってよ。

よせ、やめてくれ!これじゃ聞いていた話しと全然違うじゃん。



千「俺は、ただ宏光の心が壊れて欲しくないだけなんだ」



くっ、千賀…

心がギシギシと音を立てて崩れそうになる。

放せ、放せってばぁーっ

絶望の淵へ追いやられたかの如く。

これが、俺の男娼としての初めての日のことだった。

逆らう事など出来ない渦の中に巻き込まれてしまったかのような。




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