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桜花楼の恋

第14章 新しい仲間

・二階堂side

はぁ…河原の岸辺に佇み物思いに耽る俺、絵にもならない。



「加賀、前田家城主の嫡子和也」



俺は米屋の息子、あげく跡継ぎときている加賀なんて行けるわけないし。



「ここでは姓を亀梨とでも名乗らせてもらおう」



どうしたらいいっていうんだよ…

思い出すのは初めて会った日のこと、その度に切なく心は締めつけられる。

と、そのとき。



亀「何をやっているんだ、そんな所で?」

ニ「ぁ…‥」

亀「江戸にもこんな川があったんだ」



どっ、どうして。



亀「二階堂とか言ったっけ?」

ニ「はっ、はい」

亀「自分の国は好き」

ニ「えっ」

亀「俺は好きさ、ニコッ」

ニ「ドキッ」



わわっ、まただ。



ニ「なら、なんで参勤交代でもないのに江戸へ」

亀「下総の方へ足を延ばそうと思ってね」

ニ「‥‥っ」

亀「自分の国を良くするにはまず他国を見知る必要がある」



だから旅を?



亀「城主になったら自由に行くことが出来なくなるから今のうち」



いろいろと、回ってるってわけだ。



亀「が、江戸へ来てみたら尾張の若君がとんでもない騒動を起こしたっていうじゃん」

ニ「もしかして将軍跡目相続のこと」

亀「二階堂お前も関わっていたんだろ」

ニ「まぁ」

亀「興味半分、心配が半分気になって離れられず」



そしたら、男娼遊郭のことが耳に入り。



亀「おかしな事をしている問屋の若旦那がいるって小耳に挟み会いに行ってみたら」



なるほど、あれはそういう意味だったんだ。



亀「北山 宏光…か‥フッ」

ニ「ガヤはマジで惚れている」

亀「分かっている、あいつの眼を見れば一目瞭然」

ニ「だから協力する気に」

亀「その前から」

ニ「‥‥っ」

亀「ずっーと思っていた、なぜ太輔は徳川御三家筆頭という大名の中では最高の地位を約束されていながら、あんな寂しそうな瞳をしているのだろうと」



ガヤが?



亀「渉もそれを感じ取っていたから自分の身を投げ出してまで味方をしているんだろうな」



人にとって、必要なのは心。



亀「北山宏光という男娼が太輔にとってなくてはならない存在で」



ミツさえ傍にいれば、ガヤが幸せになれるというのなら。



亀「俺はいくらでも手を貸すつもりさ」




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