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桜花楼の恋

第15章 希望を胸に

“トッツーへ”

それは切実たる2人の思いが込められた文面だった。

“驚かせてごめんね、でもわたのことは心配しないで俺がなんとかするから”

裕太

“それより郭を出て河合の若旦那の元へ”

無理だって今は、まだ北山は太夫になってないんだし。

“お願い、わたは父上からそれを申しつけられていたんだ”

えっ―

“ガヤの相手がトッツーだと思い込んだ父上は身請けの代金を尾張が支払ってでも、そう言ってさ”

そうだったのか。

“でも、ただ出すわけじゃなく他の男の所へ行かせるようにと。もちろん、わたは河合の若旦那に身請けさせようと考えていたんだけれど”



戸「えぇーっ」

五「どうした」

橋「トッツー?」

戸「ゆっ、裕太と横尾が」

五「‥‥っ」



デキてしまったって。



五「マジで!?」

橋「あの可愛い若様を先様が襲っちゃったの」

五「いや違う良亮、2人は愛し合っているんだ」

橋「愛?」

五「良亮は俺のことが好きだよね」

橋「うん、ニコッ」

五「俺も良亮が好き、つまりは」

橋「分かった同じって事」

五「そう、フッ」



驚いたなぁ…

“俺が悪いんだ、あれほど気をつけるようにと言われていたのに”

バレちゃったんだ。

“父上は物凄い剣幕で怒ってしまい”

それで謹慎を…

“ミツのこと、心配なのは分かる。わたも気にしていたし、けれど俺達にとってはトッツーと河合の若旦那も大切なの”

ありがと。

“2人にも、幸せになって欲しいんだミツだって同じ気持ちだと思う”

そりゃ北山は…

“それに、早くしなければ父上が選んだ人が身請け金を持って郭へ”

なっ、ってことは。

“そしたらトッツー逆らえないでしょ?それが、郭の決まりだから河合の若旦那みたいに気持ちを優先してはくれないんだよ”

分かっているさ…

男娼も女郎も、それは同じだってことは。

俺達は金で買われた身。

たとえ太夫でも身請け金を支払われたら拒む事はできない。

くっそ…




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