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桜花楼の恋

第15章 希望を胸に

五「知っています」

旦那「常連客になって頂けますか」

五「えっ」

旦那「河合の若旦那も祥太を身請けしたら来なくなります」

五「‥‥‥」

旦那「あなた様まで来られなくなったらあいつも寂しいでしょう」

五「それは」

旦那「私はね非道なことをするつもりはないんです元々好きでこの商売を継いだわけじゃないですし」



そう言って寂しそうに笑う桜花楼の旦那。



旦那「ですから人助けのつもりでやっています」

五「人…助け」

旦那「おかしいですか男娼に身を売らせ稼いでいる男が、このようなことを言うのは」

五「あ、いえ」

旦那「あなた方の仲の良さは見ていて気持ちがいい」



何よりも。



旦那「息子をかわいがって頂き感謝しているんです」



早くに母親をなくしてから。



旦那「笑わなくなったあの子に笑顔を取り戻してくれた」

五「なっ」



知らなかった、俺達の前ではいつも千賀は笑っていたから。



旦那「郭にいる彼らは皆、世の非道のために売られて来た者たちばかり。うちに来たのも何かの縁」



この人は━



旦那「幸せを掴んで欲しい、それが私の本音です」



やっぱり千賀の父親なんだ。



旦那「ですからなるべく大切にしてくれる方へ身請けして頂けるよう気配りをしているつもりなんですが」



全てが思うように行くわけではない。



旦那「良亮を養子にし今まで通り通って来て下さいますか宏光が若様と添えられる日が来るまで」

五「あっ、有り難うございます」

旦那「ふっ」



良亮、良亮!ダダダッ



橋「それでね、ごっちが」



一緒に暮らそう。



五「良亮、ギュッ」

橋「ごっち!?」

戸「どうしたの」

五「出られるんだよ、ここから」

橋「えっ」

五「いいって言ってくれたんだ」



旦那が、クッ



橋「本当に」

五「あぁ、ニコッ」

戸「ハッシー」

橋「やったぁーっ」

戸「んふふっ」



ありがと俺に勇気をくれて、素晴らしき仲間たち。

この喜びを今度は北山と藤ヶ谷に、必ず味あわせてやるさ。

全力で補佐する、お前らの最高の笑顔を俺達も見たいから。

それは隠された優しさだったんだと思う郭の主人という手前けして人には見せられない。




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