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桜花楼の恋

第15章 希望を胸に

・北山side

当日は晴天にも恵まれ、2人の新しい門出に相応しい日となった。



千「良かった本当によっ‥かっ…ううっ‥ヒクッ」

宮「千ちゃん」

橋「泣かないで坊ちゃん」

ニ「うわっ、こいつすげぇ顔している」

五「ふっ」

一同「あははっ」



嬉しさのあまり、号泣する千賀を皆して笑いながらも。

可愛い奴だわ、クスッ

こいつの優しさに、全員の心が和む。



戸「北山、ニコッ」

北「トッツーお前に出会えて良かった」

戸「俺も、んふふっ」

北「幸せになれよ」

戸「うん」

河「任せとけ」

北「河合、トッツーのこと宜しく頼むな」

河「あぁ、暫くは会えなくなるけど文を出すから」

北「大丈夫だって心配はいらない」

戸「俺は会いに来る旦那がいいって言ってくれたんだ」



千賀の父親が?



戸「ここを実家だと思っていつでも帰ってくればいいって」

北「んだか、フッ」

番頭「そろそろ参りましょうか外では大勢の男娼達が見送りのため待っていますから」



この遊郭街には、桜花楼以外にも多くの郭が存在する。

その誰もが、トッツーとハッシーの身請けを喜んでくれていた。

何故なら━



「わあぁーっ、パチパチパチ」

「おめでとう」



郭から出て行ける者は、男娼たちにとって希望の光りそのものだったから。

いつか自分たちも、そう願いを込め祝福すれば望みは叶えられる。

そんな神頼みのような風習が、ここにはあってよ。

まっ、そう思わなければ辛さに耐えて行けないのも現実なんだが。



旦那「祥太お疲れさん」

戸「お世話になりました」

旦那「いや私はお前に謝らなければならない」

戸「えっ」

旦那「初出しの日、手違いで辛い思いをさせた」

戸「あれはもういいです」

旦那「そうはいかん」

戸「‥‥っ」

旦那「悪かった、よく我慢し今日まで乗り切ってくれたね。ありがとう生きていてくれて」

戸「ぁ…そんな‥ぉ…俺は‥そ…くっ‥うぅ…」



その言葉に、トッツーの瞳から大粒の涙が溢れ出し河合が無言で抱きしめる。



戸「ヒクッ…うっ‥あぁ…」

旦那「河合の若旦那、それから皆さま方。祥太を支えて下さり心から礼を申します」



ペコンと頭を下げる桜花楼の主人の隣に並び、同じく頭を下げる千賀。




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