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桜花楼の恋

第17章 過去の幻影

あれ?あいつの死体がない。



横「ミツが風呂へ入っている間、翔に言って片づけさせた見つかったら大騒ぎになるし」



さっすが、手際がいいわ。



北「なぁ、加賀へ行ったんじゃなかったのか」

横「建前は」

北「どういうこと?」

横「俺が他藩預けの身となってしまった事は、あの若君からしたら予想外のことだったんだろうね」



まぁ…な



横「立てた策を実行する上で何かと不便になる」

北「策?」

横「その事については準備が整ったら話すつもり」

北「もしかして、だからあいつ加賀へ帰ったん」

横「そう」

北「んでもタマは」

横「あれはあれで良かったと思っている」



じゃなきゃ、自分から飛び出そうだなんて思わなかっただろうしさ。



横「ふっ」



横尾さんは苦笑いしながらそう言った、これでいいんだと。

かもしれない、元々タマは侍じゃないんだから町人に戻り自由になった方が あいつの為にはいいのかもしれないな。



横「もう寝よ」



久々に、横尾さんの温もりに包まれ俺は布団の中へ身を沈めた。



横「ミツ」

北「…ん」

横「今度こそ傍にいるから俺と翔の2人で」

北「タマには連絡するつもりないの?」

横「俺達は今、耐え時なんだと思う」



藤ヶ谷が城主になるまで。



横「あいつだってそれくらい分かっているはずさ」

北「信じているんだ」

横「ミツだってそうでしょ」

北「けど、ここにいて旦那に見つかったらどうするんで?」

横「その事なら心配はいらないよ」

北「んっ?」



はっ?今、なんて言った。



横「あの人は俺達が思っている以上に器のデカい人なのかもしれないね」



全て承知していると!?

あはっ、こりゃまた驚いた大した奴だわ千賀お前の親父はよ。

翌朝、横尾さんが言った通り桜花楼の旦那は何食わぬ顔をし俺らの部屋までやって来ると。



旦那「これで、やっと前へ進められますね先様」



その策とは、いったい?

が、2人はけして決行の日が来るまで口を割らなかったんだ。

意味深な笑みを浮かべ━




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