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桜花楼の恋

第2章 最初の試練

・戸塚side

もっ、ダメ聞いてられない。



北「やめろ…よせぇーっ‥んやだ…やっ‥うわあぁ」



隣の部屋から聞こえて来る北山の悲痛な声に、思わず両手で耳を塞いだ俺の身体を。

ギュッと河合が、後ろから抱きしめる。



河「ちゃんとしっかり受け止めてやれ俺達がそうしてやらなければ誰があいつの辛さ感じ取ってやるんだ」

戸「河合、クッ」

河「そうだろ?」

戸「でも酷いよ初っぱなから唇を奪うだなんて」

河「それは」

戸「あれじゃ北山は、これから何を支えにし郭で生きて行ったらいいのか分からなくなってしまうかもしれないじゃん」



すると河合は━



河「信じよう、あいつ自分はそんな弱い人間じゃないって言ってたんだろ」

戸「‥‥っ」

河「その言葉をよ、フッ」



俺だってそう思いたい、だけど今まで何人もの男娼たちが自分を見失い。

絶望の淵へ堕ちて行く姿を嫌ってほど見て来た俺は、不安で堪らず。



戸「俺、北山のこと大好き絶対に失いたくない」

河「バカ不吉なことを言ってるんじゃねぇわ」

戸「河合には分からないんだよ俺達は一歩、間違えたらすぐそこに死の誘惑が」

河「トッツーそれ以上言ったら怒るぞ」

戸「くっ」



が、そうこうしているうちに刻一刻と時間は過ぎていき。



河「そろそろだな」



頑張れ北山、もうすぐ終わる。

しかし襖越しに聞いていた俺達には、相手の客が耳元で北山に話している声は聞こえなかった為。

凄く酷い仕打ちでも受けているように感じ取ってしまっていたんだ。

その事実を知るまでは━




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