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桜花楼の恋

第20章 粋な計らい

が、その翌日



父「そうか侍のままでいたいと」

藤「はい」

母「しかし、またあのようなやからに狙われでもしたら」

父「戦のない世になったとは言え不満分子までもがいなくなったわけではないからの」

藤「家臣へ下げるというのは如何です?」

父「松平の姓を捨てさせるということか」

藤「似たようなことが昔、豊臣家でもあったと聞き及びましたが」

父「確かに養子にしたはいいが若君が生まれ」

母「小早川のことですね」

父「だが、あれは」



俺は、思いきってタマが言ってたことを話してみることにしたんだ。



藤「筆頭家老の横尾家へ、お願いします父上」

父「太輔おまえ」

藤「そろそろ自由にしてやらねばとおっしゃっていたではありませんか、ならば」

父「それが裕太の為だと」

藤「父上の仰せなら家老も聞く耳を持つはず」

父「もう少し時をくれ」

藤「父上!」

母「太輔、殿は裕太が可愛いのです貴方と同じく」

藤「…母上」

母「この母もそう、でなければ子として今日まで共に暮らして来たりしません」

藤「‥‥っ」

母「そうでしょ?ニコッ」



あぁ―



藤「いつまで待てば宜しいのです?」

父「そちの婚儀が済むまで、さすれば返事をしよう」

藤「分かりました」



待とう、今は。

それから数日が経ち、城へ早馬が駆け込み北山が江戸を発ったとの知らせが届く。



父「どのような姫であろう会うのが楽しみじゃ」



加賀の姫君━

殿様が江戸参勤のおり町を見て回っていた際、1人の娘と出会い手を付けた。

そして子を宿し、たが娘は病気がちの親を放ってはおけず屋敷へ上がる事を拒み続け。

やがて、生まれた子が姫だったことから江戸を離れる際。

自分の子である証しとして小刀を手渡したという、必ず迎えに来るとそう言い残し。

しかし、次に訪れた時には親子の姿は忽然と消え失せており。

以来何年もの間、捜し続けやっと見つけることができた。

ったく大した奴だカメは、よくこんな大それた嘘っぱち思いつくよ、クスッ

でも感謝している、フッ

こんなにも早く北山が郭から出られたのは全て、あいつのお陰だから。

その力量により━




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