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桜花楼の恋

第21章 最後の試練

・五関side

それは小さく、だが大きな感動を呼んだ。

ポロン、ポロン、1つ1つ音を確かめるかのように琴を弾く北山の姿に。



ニ「ぅ…うっ」



わっヤバい、あいつ泣きそうな顔をしている。



橋「…ひっ‥クッ」



げっ、良亮まで!?お前ら堪えろ。



藤「くっ…ぅ」



藤ヶ谷お前もかよ。



河「んだめ…だ‥クッ」



郁人!



戸「泣くなっ…て‥言う方が無理」



トッツーってば…

ふと奥へ目を向ければ、片隅で隠れるように様子を伺っていた裕太も。



玉「…ヒクッ‥ぅ」



さすがの俺も沸き上がって来る感情を抑える事ができず、脳裏に浮かぶ数々の出来事その全てが今この場で試されようとしている。

徳川、尾張という大きな厚い壁を前にし。

だからだろう、北山の奏でる琴の音と共に伝わって来るその熱情が俺達の心を震わしてしまったのは。

と、そのとき。



殿「よい音色じゃ」

奥「はい心に響きます」

殿「宏姫そなたの想い確かに受け取った」

一同「‥‥っ」

亀「では」

殿「作法などこれから身につければよい、そうであろ」

家老「おおせの通り」

殿「なら他の姫御には丁重に詫びを入れ国へ戻って頂くよう、よいな」

家老「はっ」

殿「太輔そちもよいか」

藤「はい父上」

殿「なら決まりじゃ」



やったぁーっ

二階堂・良亮、俺・郁人・トッツー・そして裕太、加賀の若君、藤ヶ谷。

みんなの顔がほころぶ中、当の北山は放心状態になっているかの如くボーッとしていて。

北山、決まったんだよ。



殿「後は」

奥「そうですね」

殿「どうやら姫は気疲れしてしまったよう」

奥「緊張していたのでしょう先ほどから殆ど口を利いておりませんもの」

殿「太輔、庭にでも連れて行ってあげなさい」

奥「ここよりは心安まると思いますよ、ニコッ」

藤「はい父上、母上」



そして藤ヶ谷は、上座から降りると北山の方へ手を差し伸べ。



藤「行きましょう姫」

北「‥‥っ」

藤「ニコッ」



2人は外へと出て行き、残された俺達は安堵の表情を浮かべる。



殿「んっ?そちは」



ちょっとの油断、いやかなりだったかもしれない。



殿「どこぞで見たような顔をしているな」

戸「‥‥っ」



その言葉が聞こえるまで━




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