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桜花楼の恋

第24章 暗雲の兆し

奥「声が大き過ぎですよ宏姫」

藤「母上!」

奥「それでは周りに丸聞こえです、もう少し小さな声で話さなければ」

北「ちっ、また怒られちまったわ」

奥「クスッ」



まさか。



藤「ご存じだったのですか」

奥「この件に関しては私が姫に頼みました」

藤「何故に!」

奥「尾張のためです聞かなくても分かるでしょ」

藤「だからって北山に」

奥「男でも嫁いで来たからには御台所、役目を果たして貰わなければ困ります」

藤「‥‥っ」



そりゃ、けど。



奥「分かったら言われた通りになさい」

藤「くっ」

奥「そうすれば姫のことは殿に内密にしておきます貴方さえ子を成してくれれば全ては上手く行くのです」

藤「母上」

奥「いいですね」



その日の夜━



雪「若君さま湯殿の用意が整いました」

藤「お前は何故?」

雪「私は借金の肩に女郎屋に売られそうになったところを宏姫さまに助けられたのです」



北山に?



藤「でも子を産むってことは」

雪「並大抵のことではないのは覚悟のうえ」

藤「いや、しかし」

雪「あの方のお役に立てるのならば喜んでこの身を捧げましょう、ニコッ」

藤「‥‥っ」

雪「お優しい方です私が承知したと知り」



“礼なら他の方法がいくらでもある何もそこまでしなくても”



雪「貴方さまが私を抱くのを姫様が嫌に思うのであれば考え直そうと思ったのですが」

藤「あいつ、なんて?」

雪「それ以前の話しだと」



“自分のせいで悲しむ人を作りたくはない”



藤「‥‥っ」

雪「若君さまの想いが揺るぎないものである事はとうに分かっている」



“が、苦しくて優しくされればされるほど辛くて堪らなくてさ”




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