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桜花楼の恋

第24章 暗雲の兆し

奥「宏姫、言うことを聞くのです」



そこから連れ出そうとする奥方と、留まりたい俺との間で小競り合いが行われている中。



北「ほっといてくれ」



雪の声は次第に激しさを増して行き、行為の終わりが近いことを示していた。



奥「放っておけるわけないでしょう」



再びギュッと。



奥「こんなにも辛そうに眼にいっぱい涙を溜めているそなたを」



はっ?俺、泣いてなんか…



奥「自分が今、どんな顔をしているのかさえ気づきもせず、この子ったらほんに強情な」

北「えっ」



そっと頬に触れた奥方の手…



奥「前にも言ったはずです事情はどうであれ貴方は私の娘だと、ニコッ」



愛情あふれたその眼差し。



北「ぁ…男‥なのに?」

奥「だからなんです誰が何と言おうとも貴方は私の娘、何か不服でも?フッ」

北「…ぃ‥や」

奥「終わったようですね」



そして、いつの間にか物音1つ聞こえなくなった隣との境目の襖を見つつ。



奥「では私達も参りましょうか貴方の部屋へ」



言われた奥方の言葉に何故だか俺は素直に従い、その晩は眠りにつく。



奥「安心してお休みなさい、ずっと傍にいてあげます太輔の代わりにこの母が」



こうして、そんな夜がこの先も続いて行ったのは言うまでもない

まるで、互いの想いをぶつけ合うかのように俺と奥方はその度、小競り合いを繰り返し。

が、7日ほど経つ頃になると。



奥「どうしたのです今宵は行かないのですか?フッ」



落ち着きを取り戻して、あとは時の流れを感じつつ日々待つことしか出来ず。

んだが、そんな俺の傍には。



奥「今日も一日、なに事もなく終わりましたね」



いつも尾張の奥方がいたんだ、気遣うかの如くに。




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