テキストサイズ

桜花楼の恋

第24章 暗雲の兆し

慌ててミツの部屋へ向かおうとしたら、父上が出て来ちゃうし。

わわっ!



殿「裕太、どうしたのだ」

玉「あっ、父上に会いに」

殿「そうか、では共に庭を散策するとしよう」

玉「はい、ニコッ」



聞かなきゃ━



玉「あの…父上?」

殿「仲ようしているか」

玉「えっ?」

殿「忠長とじゃ」

玉「もちろん、ニコッ」


殿「そうか、フッ」



ミツのこと、どう思っているのかを。



殿「裕太…」

玉「はい」

殿「なぜ男なのだ」

玉「はっ?」



が、唐突に父上の方から。



殿「確かに渉は人として申し分ない」

玉「‥‥‥」

殿「しかし男でありながら同じ男に慕情を抱く、これが世には理解できぬ」

玉「逆にどうして拘る必要があるんです」

殿「んっ?」

玉「男でも女でもいいじゃないですか本気で想い思われているのなら」

殿「だが子はできん」

玉「子が欲しくて恋をするわけではありません」

殿「‥‥っ」

玉「理由なく相手を好きになり傍にいたいと思う、子はその結果でデキるもの」

殿「確かに父と御台との間にも子はデキなんだ」

玉「でも父上は母上を誰よりも大切にされていた」

殿「同じだと、お前は言いたいのか?」

玉「人として自分の生涯の中で添い遂げたい人が」

殿「ただ男であっただけに過ぎないと」

玉「ニコッ」

殿「ういやつめ、フッ」



今だ━



玉「姫のことも、そう思っていますか?」

殿「ん…」

玉「父上は血の繋がらない俺を慈しみ育てて下さいました」

殿「心は親と子であると信じていたからな」

玉「男色と分かってからも温かく見守って下さった」

殿「お前が可愛いからだ」

玉「では姫も、宏姫は」

殿「‥‥‥」

玉「父上!」



が、答えてはくれず。



殿「それより太輔に子ができた」

玉「ぁ…‥」

殿「雪は良い娘じゃ、きっといい子が生まれるであろう」

玉「父…上」



ミツはどうなるの?ねぇ教えて。

が、その日。

結局は、本心を聞き出せないまま俺は城を後にする。

言い知れぬ不安を胸に抱…き




ストーリーメニュー

TOPTOPへ