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桜花楼の恋

第25章 それぞれの春

・藤ヶ谷side

その日、とつぜん父上は。



殿「太輔、遠乗りに行かぬか」

藤「はっ?」

殿「たまにはいいであろう付き合え、フッ」

藤「はい」



パカッ、パカッ、パカッ、どのくらいぶりだろう2人で馬に乗るだなんて。

“ヒッヒーン”



殿「どぉーどぉ、よーし良い国じゃな尾張は」

藤「いきなり、どうされたのです?」

殿「太輔」

藤「はい」

殿「わしは御台をこよなく愛しておる」

藤「分かっております」



今さら言われなくとも、フッ



殿「なれど」

藤「母上と何かあったのですか?」

殿「そちは、なぜ宏姫が差し出し雪を抱いたのだ」

藤「えっ」



今度は、なんだよ。



殿「あれほどまでに拒んでおきながら、よりによって」

藤「姫を愛しているからです、フッ」

殿「父は抱けなんだ御台が辛い思いをすると分かっていたゆえに」

藤「それは」

殿「なのにそちは抱いた何故じゃ?」

藤「そうしなければ苦しませる事になる、そう思ったからに他なりません」

殿「苦しませる?」

藤「父上や母上に負い目を感じ」

殿「どういう事だ?」



俺は、北山が言っていた言葉や雪を通し知った あいつの気持ちを話して聞かす。

すると━



殿「そうか、そういう事であったのだな」

藤「父上」

殿「よは何も分かっていなかったのじゃ、あのときの御台の気持ちも」

藤「えっ」

殿「己で良かれと思った事は独りよがりでしかなかった」

藤「父上」

殿「比べて、そちは姫の心に添い辛さも甘んじて受けようと」

藤「俺は」



それは北山も同じこと、俺達はその慟哭を共に味わうことで難関を乗り越えようとしただけに過ぎない。



殿「そうであろう?」

藤「しかし今は」

殿「顔を出してやるがよい待っておると思うぞ」

藤「父上」

殿「男であれ女であれ同じか、フッ」

藤「えっ」

殿「御台が、わしに言った言葉じゃ」

藤「母上が」

殿「太輔」

藤「はい」

殿「宏姫は男であろう」

藤「なっ」



バレていたのか、いつの間に!?




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