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桜花楼の恋

第25章 それぞれの春

・藤ヶ谷side

城内が、慌ただしい気配に包まれ。



藤「雪、頑張れ」

雪「若…君‥さま、ハァハァ」

奥「太輔、あとはおさじに任せ退室しなさい」

藤「しかし母上」

奥「子を産むは、おなごの戦(イクサ)殿方になすべき事はありません」

藤「‥‥っ」

北「太輔、行こう」

藤「あっ、あぁ、チラッ」

北「雪…」

雪「心配…いり‥ま…せん私は‥大丈夫…で‥くっ‥ああっ…ハァハァハァ」

奥「太輔!」

藤「くっ」



どうか無事、やや子を。



北「大丈夫だって雪は強いし」

藤「分かっている」



ごめん宏光こんな姿を晒し、だけど心配で堪らないんだ。



横「どう調子は?」

北「横尾さん」

玉「まだ掛かっているの」

藤「タマ」

横「初めてのお産は、なかなか生まれないらしい」

玉「亮太もかなり大変だったって言ってたから」

北「会ったのか?」

横「雪解けを待って子供の顔を見に、フッ」

藤「そっ」

北「可愛かったべ?」

玉「凄く、フフッ」



喋っている間にも、襖の向こうからは雪の苦しそうな声が聞こえ。

それは明け方まで続き。



「ほぎゃーほぎゃーほぎゃあぁーっ」



うっ、生まれた!



奥「おめでとう太輔、姫」

藤「母上」

奥「若君の誕生じゃ、ニコッ」

藤「ぁ…‥」

北「くっ、雪!」



ダッと部屋の中へ飛び込んで行く、ひろの姿を追い自分も。



奥「あとは頼みましたぞ渉殿」

横「はっ」



ダダッ!



北「雪、あんがと」

雪「姫さま、ニコッ」

藤「ありがとな、フッ」

雪「抱いてやって下さい、この子は姫さまのお子です1番に貴方さまが」

北「うん」



そっと、そぉーっと小さな身体を抱き上げる宏光。



北「くっ、ギュッ」



その瞳から、涙が零れ落ち。



藤「想(そう)」

北「えっ」

藤「若子の名前だ、フッ」

北「太輔」

藤「みんなの想いから生まれた子」

北「だから想?」

藤「あぁ、ニコッ」

雪「想松君、いいお名前ですね」



それから━




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