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桜花楼の恋

第3章 つかの間の休息

すると、藤ヶ谷は。



藤「昔な子供の頃に屋敷を抜け出した事があってさ」



ポツリ、ポツリと語り出す。

興味本位で覗いた芝居小屋、そこに自分より少し年下のガキがいて。



藤「それから、よく会っていたなぁ フッ」



そいつに教わったらしい。



「心が伴わなきゃ何をやったって相手には伝わらない俺たち役者はそれで食っている芝居は人の心に夢と希望を与えるものだから」



ふーん。



藤「そんなふうに言った奴は初めてだったから俺の周りの連中はやれ当主とは侍とはこういうものだこうでなければならない。こうでいるものだ、そんな奴らばかりでよ フッ」



若さまっていうのも、大変なんだな。



藤「ある意味、俺も縛られているようなもんさ家柄というやつに」

北「兄弟は?」

藤「俺とは違いデキのいい弟が1人、フッ」



いるんだ、こいつにも。



北「可愛いか?」

藤「あぁ、お前も会いたいんじゃない?弟たちに」

北「くっ」

藤「どうしているかだけでも知りたいだろ様子を見て来てやってもいいぞ」

北「…いぃ」

藤「無理しちゃって、フッ」



優しくしないでくれ。

んなことされたって俺達の関係はなんにも変わらないんだから。

客と男娼━

それだけだ、よけい虚しくなるだけじゃん。

が、藤ヶ谷はそんな俺の気持ちを知ってか知らずか。



藤「ってことで北山、俺は本気でお前を自分に惚れさせるつもりでいるから覚悟しとけ」

北「‥‥っ」



マジ、あり得ないっつうの。

どこからそんな自信がくるんだか俺には理解できないし。

不思議な奴、フッ

そしてその日、俺達はまったりと時を過ごす。

郭という囲いの中で━




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