テキストサイズ

桜花楼の恋

第3章 つかの間の休息

藤「どうやら俺は戸塚太夫に嫌われてしまったみたいだ、まっ仕方ないか」

河「分かっていて、どうして決まり事を破ったりしたんだ?」

藤「他の客と同じことをしても北山の心は掴めないだろ、フッ」

北「‥‥っ」

藤「抱くからには惚れさせる、じゃなきゃ手を出したりはしない」



おまえ━



藤「戸塚太夫に伝えてくれ、それが良かったか悪かったかはこれからの北山を見て判断してくれと」



本気で惚れているの?

昨日、会ったばかりの北山のことを。こりゃ驚いたわ…



河「ふっ、俺は河合郁人」

藤「藤ヶ谷太輔だ、ニコッ」

河「これから宜しく何だかお前とは仲良くなれそうな気がするよ、フッ」

藤「俺も、クスッ」

河「んっ?」

藤「お前のことは知っている戸塚太夫を護るためダチと協力していろいろと策を練っているんだろ?」

河「参った、お前一体どこの若さまだ?フッ」

藤「ふっ」

河「言えない事情があるみたいだな?」



じゃ深くは追求しないよ。



藤「もう戻ったほうがいい心配しているみたいだから」



チラッと丸障子の方を見る藤ヶ谷、そこにトッツーの影が見える。



河「あいつが、お前のことを見直すかは俺が強制する事じゃない」

藤「分かっている、フッ」

河「北山のこと頼むな泣かせんじゃねぇぞ」

藤「お前も頑張れ、なるべく早く身請け出来ることを俺も願っているよ」

河「あぁ、フッ」



藤ヶ谷太輔か…

不思議な奴だ、まるで以前から知り合いだったみたいな。

そんな親近感さえ沸いて来る、これなら大丈夫かもしれない。

俺は、そう思いながらトッツーが待つ部屋へと戻って行ったんだ。

懐かしさにも似た、清々しい気持ちに包まれながら。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ