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桜花楼の恋

第5章 広がる不安

玉「とにかくこれは父上の命令だから」

藤「そっ、じゃ逆らえないな」



えっ、行っちゃうの?宏光はどうなっちゃうんだよ。

それから、遊郭街の外へと出て暫く行くと人気のない場所に何処かの大名の篭みたいなのがあり。



ニ「あの家紋、まさか!?」



ガヤさんは、それに乗って行ってしまってさ。



ニ「嘘だろ!」



約束ちがうじゃん、宏光を身請けし一緒に暮らすって言ってくれたじゃんか。

ガヤさん!



ニ「戻ろう千賀」

千「くっ、ヒクッ」

ニ「千っ…」



誰にも言えない、こんな事。まして宏光にはなおのこと…



ニ「ほら、なっ?」



俺は、悲しみに包まれながら郭へと戻った。



旦那「それは本当ですか?二階堂の坊ちゃん」

ニ「あぁ迎えの篭に乗って、 だからミツを今夜 俺が買っても構わないだろ?」

旦那「それがそうもいかないんですよ、あの方が支払いを怠らない限りは許しがないと」

ニ「はあっ?」

旦那「取り合えず月いっぱいは頂いてますので」

ニ「じゃそれ以降ならいいんだな?」

旦那「このまま、お支払いがなければの話しですが」



帰ってくるよね?

夜、宏光の部屋の明かりはいつまで経ってもついていて俺は心苦しくなってしまう。

空には丸いお月さま、ガヤさんも同じのを見ているのかな?

そう物思いに更けっていた、そのとき。



「千ちゃん」



その声が背中から聞こえたのは―




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