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桜花楼の恋

第5章 広がる不安

・藤ヶ谷side

さて、どうやって話そう。



ニ「教えてくれ、どうしてミツを独り占めしようとする?惚れてるからなんて在り来たりの言葉は聞く耳もたないぜミツは男娼、誰にでも抱く権利はあるんだ」



こいつと分かり合えるには、嘘いつわりは通用しない。



ニ「答えろガヤ」



年齢のわりには、粋がっている二階堂。

しかし、さっきのわたを見ていた眼をみる限り根は純粋な奴と見た。

なら、正直に話すしかないだろう。



藤「誰にも言わないと約束する?」

ニ「俺が口の軽い奴に見えるとでも」

藤「いやその逆、ここへも他の奴には言わずに来たんじゃない?」

ニ「千賀にもな」

藤「もう、だいぶ前の話しだ」



あれは、そう。



藤「俺が5・6歳の頃」

ニ「ちょ、待てガヤ」

藤「なに?」

ニ「参勤交代って子供や奥方は置いて行くんじゃ」

藤「父上は子煩悩なうえ母君を溺愛していた、だから毎回ではないにしろ」

ニ「時々連れて来ていたってわけ?」

藤「あぁ、フッ」



俺は、一目で江戸の町が気に入ってしまい。



藤「よく屋敷を抜け出しては怒られていたっけ、クスッ」

ニ「やんちゃな若君だったんだな、フフッ」

藤「すっげぇよ、ニコッ」

ニ「俺もだ、クスッ」

藤「お前もか?フッ」

ニ「だって窮屈でしょうがないじゃん」

藤「確かに、やれこうしろ、あぁしろだの」

ニ「こうなれ、あぁなれ」

藤ニ「こうでなきゃならない…ぷっ、あはははっ」

ニ「同じじゃん、ハハッ」

藤「本当だな、クスッ」



が、そんな話しから始めたせいか二階堂の角はすっかり取れ。

俺たちは、暫く昔話に花を咲かせた。

それから本題へと移す。




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