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桜花楼の恋

第6章 兄弟の絆

千「良かったら一緒に行こう」

玉「いい」

千「遠慮せずに」

玉「してないって」

千「独りじゃつまらないだろ?なっ、グイッ」

玉「うわっ、ちょ引っ張んないで」



なんなの一体、馴れ馴れしいったらありゃしない。

けど、半ば無理矢理つれて行かれた所そこは。



玉「うわあぁーっ、お花がいっぱい」

千「気をつけて足を滑らすと谷に落ちちゃうからさ」

玉「谷?」

千「うん、そこには藤の花が咲いていて凄く綺麗なんだけど、ここからじゃダメなんだ遠回りしないと」

玉「そう」



藤の花、谷。

俺はその話しを聞いていなかったから、ここがガヤの思い出の場所だったとは知らず。



千「そういえば宏光が暮らしていた場所が、その谷の近くって聞いたな」



えっ?その名前って確か…



千「ねぇガヤさん元気?」

玉「うん」

千「そっ、もう来ないなんて事ないよね?」

玉「無理じゃない」

千「どうして!」

玉「ガヤは」



と、そこへ。



宮「千ちゃん」

千「宮田あぁーギュッ」

宮「お待たせ、ニコッ」



こいつが宮田っていうんだ。



宮「誰?お友だち」

千「若様あぁ、んふふっ」



説明になってないし。



宮「そう若様ね」

千「で、タマっていうの」



納得しちゃうんだ?そんなんで。



宮「ネコ?」

玉「違う、なんど言ったら分かるわけタマは毬、手毬のタマ」

宮「‥‥っ」



すると突然こいつの顔色が変わったかと思うと。



宮「その手毬、何色?」

玉「紫と黄色だけど」

宮「名前は」

玉「だから」

宮「そうじゃなく本当の名」

玉「そんなの今日、会ったばかりの人に教えられるわけないじゃん」

宮「下の名前だけでもいいから」

千「宮田どうしたんだよ」



いきなり物凄い勢いで食らいついて来てさ、その迫力に押され俺は…



玉「ゆっ、裕太」



とたん━



宮「ぁ…あぁ‥見つけた」

玉「えっ」



ギュッと強く抱きしめられ。



宮「やっと見つけた裕太…くっ‥俺の可愛い弟」

玉「なっ」

宮「うっ、わあぁーっ」

千「宮…田」

玉「おと…うと‥って」



それは、あまりにも突然な。



玉「兄…さま?」

宮「裕太、裕太あぁーっ」



実の兄との再会だった、予告なしでの。




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