
愛すると言う事…
第7章 episode 7
智「………すいませんでした」
涼「智が謝る必要ねぇだろ」
智「……まぁ…原因は俺なんで」
涼「…ハァ…誰だよ、あいつ引っ張った奴」
誰かの紹介か…
何でまたあんなの雇ったんだろう。
翔さんもシゲさんも、確実に面接で落としそうな人間だ。
それほど、この店に似つかわしくないと思った。
マンションに帰ると、予想以上の疲労感が全身を襲う。
シャワーを浴びるどころかコーヒーを淹れる気力もなかった。
…多分、あいつの所為もある。
ソファに横になってすぐ、翔さんが帰って来た。
翔「疲れたか?……ベッド行け」
智「……大丈夫。…コーヒー」
翔「座ってろ。俺が淹れてやる」
申し訳ないと思いながらも甘えさせてもらう。
煙草を咥えたらさっきの光景を思い出してムカついてきた。
火を着けて煙を吐き出すと、目の前に差し出された湯気の立つコーヒーカップ。
智「………ありがと…」
翔「………涼介に聞いたよ」
智「……あー………ごめん…」
揉め事を起こしてしまったと言う意味で謝ったのに、やっぱり翔さん小さく笑う。
『涼介も謝ってきた』と苦笑いして小さく笑った意味を知る。
翔「お前たちの所為じゃねぇのに…(笑)」
智「………元を辿れば俺だろ?」
翔「いや、もっと元を辿れば亮だ」
智「……亮さん?」
翔「あぁ。…亮の知り合いが弟をどうにか店で働かせて根性叩き直してほしいって頼んできたらしい。亮も昔世話になった人の息子だから断りきれなかったそうだ」
智「……なるほど」
それなら、あんな奴が店で雇われてても納得出来る。
亮さんの頼みなら、翔さんもシゲさんも放って置けなかったのかもしれない。
翔「…その結果、嫌な思いさせたよな?申し訳ない」
智「…俺は、いいけど。……涼介さんがムカついてたから」
翔「お前が一番嫌な思いしただろ」
智「…別に。…まぁ、潤の事言われたのはちょっとムカついたけど」
あいつは、いい奴だ。
口は悪いし、誤解されやすいけど優しい人間なのは良く知ってる。
現に俺がこっちで働く事になっても応援してくれたくらいだ。
