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愛すると言う事…

第7章 episode 7


亮さんの顔が…

般若の様だった。
誰もが俯き一言も発しない。
怒らせると恐いのは、翔さんの次くらいだと、かなり前に誰かが言ってた気がする。

亮「お前さぁ、この間も言ったけど…俺の伝でこの店に居れる事忘れんな?俺の顔潰すのだけは絶対ぇ許さねぇかんな!」

そこから亮さんの口は止まる事を知らず、延々とただただ新人くんは罵られ続けた。

初めて見た。
亮さんがこんなに人を罵り罵倒してる姿。

唖然としてたのは俺だけで、他の連中は当たり障りなく知らん顔。
隣に居た先輩がそんな俺に気付いたのか『…こいつ来てからずっとこんな感じだよ、亮さん』ってちょっと苦笑気味に教えてくれた。

亮「いいか?お前なんかより、智の方が先輩なだけじゃねぇ。…売り上げもお前とは比べもんになんねぇんだよ。ヘルプじゃNo.1なんだ!分かったか!」

最後の最後に『……お前なんか店に紹介しなきゃ良かった』って、溜め息混じりに吐き出し控え室を出ていった。

さすがにここまで言われたのは初めてなのか、結構へこんでる新人くんが一人でポツリと座ってて。
だけど誰も庇おうとも慰めようともしなかった。

智「………なぁ」

声を掛ければチラッと顔を上げる。

智「……悪かったな?」

『何が?……っすか』

智「……俺の所為だから」

新人くんは『だから、何がっすか?』と、ちょっとだけキレ気味だった。
隣の先輩に『全部ひっくるめてだろ!智が謝る必要ねぇのに"悪かった"っつってんだろうが!』って、また新人くんは怒られてしまった。


結局、新人くんは次の日無断欠勤した。

亮さんがただただ、無駄に翔さんとシゲさんに謝る羽目になり。
翔さんは何も言わなかった。
シゲさんはずっと新人くんの文句を言い続けてたけど、翔さんはずっと黙ったまま。

この時だけは、翔さんが何を考えてたのか分かんなかった。

無断欠勤した日から新人くんが店に来る事はなく。
"けじめ"を付ける事もせず辞めた。

一週間待ってみたらしいけど、やっぱり出勤して来なかったから解雇せざるを得なかったってシゲさんが言ってた。

翔「経営者に情けはいらねぇな…」

先に帰って来た俺がソファでコーヒーを飲んでた時、疲れきった顔で帰って来た翔さんがぼそりと呟いた。


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