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愛すると言う事…

第7章 episode 7


翔さんのコーヒーを淹れて差し出すと苦笑を漏らす。

智「……変わってほしかったんだろ?」

そう言いながら隣に座ると、コーヒーを眺めてる翔さんが何となく少し思い詰めた顔に見えた。

亮さんが預けられたって考えると、何とかしてやりたいって翔さんの気持ちは分かる。
けどその優しさに、新人くんは答えられなかった。
こればっかりは誰の所為でもない気がする。

翔「難しいわ、人を雇って纏めるの」

智「……だろうな」

珍しく翔さんが弱ってた。

だから、俺はいつもしてくれてる様に翔さんの頭を撫でてみた。
やっぱり苦笑する翔さんは、そのまま俺の肩に頭を乗せる。

翔「…ハァ…亮まで辞めるって言い出した…」

智「………」

翔「責任取るとか言い始めて…」

智「………」

翔「シゲと斗真と、説得して引き止めたけど…納得はしてなかったなぁ」

智「……………」

翔「………辞めんのかなぁ、あいつ」

ずっと。
俺の肩に頭を乗せたままボソボソ独り言の様に話す翔さん。

俺は頭を撫で続けてた。

それっきり黙り込んだから、『……シャワー。…行ってきたら?』って言うと数分ボーッとした後、静かに立ち上がり風呂場へ向かった。

掛ける言葉に悩んでたけど、何となく翔さんはただ聞いてほしいだけなんじゃねぇかと思ったから…
答えなんか求めてなかった気がする。
だから何も言わずに俺は隣で聞いてた。

それが正解だったかは分かんないけど、シャワーを浴びて出てきた翔さんはちょっとだけスッキリした顔してる。

入れ替わりに風呂場へ向かう俺とすれ違う時、翔さんは俺を抱き締めた。
何の抱擁かは全く分かんない。

ただ、抱き締められた俺の耳に小さく『ありがとう』って聞こえたから、やっぱり正解だったようだ。


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