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愛すると言う事…

第7章 episode 7


何だかんだとあっと言う間に一ヶ月。

亮さんも店を辞める事はなく、光一さんの店に移ると言う事で話は落ち着いた。

そんな事もありながら、旅行の話もちゃんとマネージャーたちによって同時進行されてて。
明日には全員で出発する事になってる。

もちろん、店は一週間の臨時休業。

常連客には周知の事実らしく、『お土産楽しみにしてる♪』なんて言う客もいた。


マンションに帰ると、すぐにシャワーを浴びた。
休みに入るとあって翔さんは帰りが遅くなると、俺が帰ろうとしてた時わざわざ言いに来てくれた。

別にいいのに…

『言わないと起きてるだろ?』って言われて、別に待ってたつもりはないんだけど。
何となく翔さんが帰らないと寝る気になれない俺がいるのは確かで。

自分でもそれは不思議で仕方なかった。


やっぱり歩いて帰る俺。

タクシーで通り掛かった涼介さんが声を掛けて来たけど、もう乗っていけとは言わなかった。
『お疲れ』と声を掛け一言二言話すと『気を付けて帰れよ?』と走り去る。

あの人はやっぱり"俺"が嫌いな訳じゃないんだと改めて思う。
現に居なくなった俺を必死で探してくれた上に三年間眠っていた時も、かなり心配してくれてたらしい。

ソファで煙草を咥えた。
立ち上がる紫煙を眺めて、やっぱり寝る気になれない事に気付く。
コーヒーを淹れて飲み終わっても、何故か寝室のベッドに入る事なくただ眠気に飲み込まれるまま、ソファに横になった。


気付いたらベッドの中で、また翔さんが俺に巻き付いて寝てた。

俺はまだ魘されてるんだろうか…
そんな気は全くしないんだけど。

やっぱり全身にじっとりと汗ばんだ感覚が気持ち悪くて、腹に絡まる翔さんの腕を静かに外そうと試みる。
けど、無駄に終わった。

翔「……起きたのか?」

智「…ん。………まだ魘されてんの?」

翔「………いや」

智「………」

じゃあ、何故あんたは俺に巻き付いてるんだ?

そう聞こうと思った。
…けど。
やめた。

何となく理由が分かったから。
分かったところで"ごめん"って言葉も違う気がして、黙って諦める俺。

なのにこの人は『最近抵抗しねぇな?』と小さく笑った。

智「……してる。…腕、外そうとしたろ」

翔「あんなん抵抗に値しねぇよ(笑)」

智「………」

翔「それはそれで嬉しいけど、ちょっと物足りねぇな?」

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