
愛すると言う事…
第7章 episode 7
笑いながらそんな事言うから、ガバッと身体を起こしてベッドから足を下ろしたら、声を上げて笑った。
振り向いて睨んでも、笑ったままの翔さん。
寝室を出ようとした俺の背中に、『ここに居てくれるだけで安心するよ』と呟いたけど、胸の奥がツンとしたから聞こえないフリをして。
リビングからそのままキッチンに入った。
夕飯を作って食べ終わると、翔さんが旅行へ行く準備を始める。
俺は数枚の着替えさえあればいいと、すぐに終わったのに翔さんはあれもこれもと詰め込み、鞄の口が閉まらないと悪戦苦闘してた。
無言で傍まで行った俺は、翔さんの鞄を漁って無駄な物を取り出す。
何て事はない。
本当に必要な物だけにしたら、鞄の2/3で納まった。
智「…今までどうしてたんだよ」
翔「………無理矢理閉じてた。向こうで帰りの鞄一つ増えたけど」
智「…馬鹿だろ?……そっちの方がよっぽど無駄だ」
翔「………」
拗ねた様な顔してる翔さんを、呆れた溜め息を吐き出し見つめる俺。
最終的には『お前は荷物が少な過ぎるんだ』って文句を言い出した。
智「……だったら、行かねぇよ」
翔「………は?」
智「…んな文句言われてまで……行かないっつってんの」
翔「マジで言ってんじゃねぇよな?」
智「………」
翔「お前…一週間も俺をまた一人にする気か?」
たかだか旅行だろ…
とは、口が避けても言えなかった。
翔さんの顔が、事の外真剣だったから。
智「………もう…何処にも行かねぇよ」
翔「だったら俺も行かない」
智「…そうじゃねぇよ。……居なくなんないっつってんの。悪かったよ、もうそろそろ安心してくれよ」
初めて、翔さんを自ら抱き締めた。
いつもはされるばっかだったけど、こんな事で…まぁ翔さんにしてみれば大事なのかもしれないけど…
本当に些細な事でこんな風に不安にさせるのは、やっぱり俺の所為だから。
翔「悪い。……智が悪い訳でも、責めてるつもりでもないんだ。ただ…急に思い出したりするから」
智「………もう俺には、本当に誰も居ない。翔さんしか……居ないんだ。帰る場所も、ここしかもう無いから」
抱き締めた翔さんは、『情けねぇ』って小さく笑って。
『頭では分かってんだ』って言いながら俺の腰に腕を回して離れようとしなかった。
