
愛すると言う事…
第1章 episode 1
俺は本当に何にも興味が無かったから他の店がどんななのかも全く知らなかった。
ただ最低限のルールと常識非常識くらいしか…
翔「うちは枕営業を禁止してる」
智「…へぇ」
翔「智も枕営業してるのか?」
智「…いや………ってか、営業自体してない」
翔「へぇ♪…じゃあ、同伴もアフターも?」
智「…しない。面倒臭ぇ」
翔「はは(笑)…それで良くNo.1維持してるな?」
智「……潤にも言われてる。"やる気の無さはこの店一番だ"って…」
翔さんは『まぁその雰囲気が女には堪んないだろうな』って笑う。
まただ…
何か分かんないけど、笑わないでほしい。
男の笑顔にドキッとする事自体おかしいのに、この人の笑顔はドキドキさせた上に胸を締め付ける勢いがある。
翔「もし今の店にケリ付ける時、手こずる様なら電話してこい。話付けてやる」
智「……ねぇ…」
翔「ん?」
智「…何で……俺?」
翔「あぁ。たまたま人に誘われてお前の店に行ったんだ。何か"無気力なNo.1が居る"って。そしたら智だった。それから何度か誘われて行ってみたけど…何だろうな?智の笑った顔、見てみたくなった」
…え?
何コイツ…
俺を殺す気なのか?
心臓があり得ない動きをしてる。
何だこの感じ。
苦しいのに、ちょっとだけ胸の奥が温かい気もする。
イライラする。
何杯目か分かんない目の前のビールを、一気に飲み干した。
勢い良く煽った所為で口の端から溢れて、手の甲で拭ったら翔さんは何とも言えない艶っぽい瞳を向けてくる。
やめろ。
俺を見るな。
こんな感情を俺は知らない。
潤にいつも言われる"やる気の無い男"の俺には、"やる気"どころか興味も無かったから殆んど人と関わって来なかった。
こんなに人と喋ったのだって、かなり久々だ。
仕事でも話を聞くだけで俺からは喋らないのに…
今のこの得体の知れない感情を何とかしたくて、ビールを何杯も飲んだ。
その証拠に、空のジョッキがそこら中に転がってた。
