
愛すると言う事…
第3章 episode 3
店を出ると、やっぱり歩いて帰ると言う智と初めて並んで歩いた。
翔「楽しそうだったな?」
智「…あー、まぁ。マネージャーは、楽かも」
翔「楽?」
智「…ん。……あんましつこくいろいろ聞いてこない。どっちかって言うと、一方的に喋ってる」
翔「へぇ」
静かに黙って横を歩く智は、話し掛けないと自分からは口を開く事が殆んど無い。
それは、家でも店でも同じ。
翔「斗真は優しいからな。多分、店の人間で一番かもな?」
智「……何となく、分かる。光一さんも優しいけど…マネージャーの場合、引き際も然り気無い気がする」
思い出してるのか、ちょっと表情も和らぐ智にやっぱりちょっと妬けてくる俺は、本当に小せぇなぁって思う。
若干の自己嫌悪に、智はすぐに察するから。
智「…翔さん、案外気にする人だな?」
翔「…ハァ……智がそんなだからだろ?」
智「……そんな?…って、何?」
翔「お前は、放っておくとどっかに行ってしまいそうだって事。…いつもそう思ってるよ」
信じきれてない自分に嫌気がさす。
直接本人から気持ちを言葉にされた事がないのもあるのかもしれないけど、やっぱり俺だけが智を好きで俺だけが必死なんじゃねぇかって、いつも思う。
智「……俺は、帰るとこなんか無い。翔さんのとこに帰るしかないんだ」
ふ…と、そう呟いた智。
横の智に視線を向けると、耳が赤くなってる。
精一杯の答えなんだろう。
今は。
その答えだけで十分だ。
まだまだ、智の想いは始まったばっかだから。
少しずつ、その想いをどんな形にせよ伝えてくれたら…と願う。
だから、自覚はないらしいけど頭を撫でられるのが好きな智に、頭をそっと撫でてやった。
フロアに"翔"として出る事が無くなった俺。
事務所にはシゲが居て。
俺はフロアを見渡せる控え室に常に斗真と一緒に居る。
時々、様子を伺いにフロアに出るけど、挨拶をして回る程度ですぐに戻る。
斗「翔さん居ると何か…落ち着かないです」
翔「…何だ、それ」
斗「だって…こんな狭い空間に翔さんと二人ですよ?」
翔「は?光一に怒られるぞ?」
斗「そう言う意味じゃないです!……智くん。…絶対気にしてる…」
斗真の最後の言葉に、俺の頭の中は?でいっぱいだった。
