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愛すると言う事…

第3章 episode 3


何故、俺と斗真が二人で居ると智が気にするんだ?

首を傾げた俺に、斗真はわざとらしい溜め息を吐き出した。

斗「あの、まさかとは思いますけど……翔さん、自分だけが智くんの事好きだと思ってます?」

翔「…?……いや、そこそこには想ってくれてるとは思ってるけど」

斗「…ハァ~……そこそこって……可愛そうだ。智くんが可愛そう。…翔さんは気付いてると思ったのに…」

翔「………」

斗「あの、智くん。…多分、翔さんが思ってる以上に翔さんの事想ってるし、惚れてますよ?」

…マジか。

え?
ってか、何で俺よりこいつはそんな事気付いてるんだ?

斗真は、智がいつも俺を目で追ってた事や何気ない会話で俺の話になると表情が柔らかくなる事、同伴したりすると一日不機嫌そうな事を、延々と話し出し。

斗「もう、見てるだけでこっちが照れちゃうくらいですよ♪」

楽しそうに笑った。

『まぁ俺と光一さんくらいですけどね、気付いてるの』と付け加えると、フロアの方へと視線を戻した。

何だ…
ちゃんと想われてるんだ。

斗真の話を聞いて思い出した。

智は言わないんじゃない。
"言えない"んだ。
そこにはもちろん照れもあるだろうけど、過去に身内に浴びせられた言葉の数々を考えれば、自分の想いを口にする事への恐怖や不安は計り知れない。

それを思えば俺は本当に小さい男だ。

思った事を口にした所で、今まで受け入れてもらえなかったんだ…口を閉ざすのは当然だ。


マンションに帰ると、ソファに座る智が煙草を片手にコーヒーを飲んでた。

翔「ただいま」

智「………おかえり…」

このやり取りだって、もう何日も繰り返してきた。
いい加減慣れても良さそうなのに、智は照れ臭いのか未だ目を合わせない。

隣に座ると智がすぐに立ち上がるのは、俺にコーヒーを淹れる為。

俺が自分で淹れればいいだけの話なんだけど、智の照れを緩和させるのにはちょうどいいと、勝手に思ってる。

翔「最近、涼介とは?」

智「……殆んど付いてない」

翔「斗真?」

智「…んーん、涼介さんの方」

こんなボソボソとした会話で成立するのも、この時間だからかもしれない。

涼介との事があってから、斗真はなるべく智と涼介を一緒にしない様に気を遣ってくれてた。


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