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愛すると言う事…

第3章 episode 3


ヘルプに付いてたのは智と侑李。

斗真は光一に耳打ちするとすぐ智に何かを伝え、そのまま席を外した。

ヘルプが席を立つなんて事、斗真がさせるのは今までに無く。
珍しい光景だっただけに俺の中で何かが引っ掛かった。

俺は部屋を出て、智と斗真の元へ向かった。


カウンターに向かうと、斗真しか居なくて。

翔「智は?」

斗「あ、翔さん。…実は今、智くんの父親の妹さんって方がご夫婦で来られて」

翔「……父親の妹?」

斗「はい。何か近くまで来たから、顔を見に来たとかで…暫く何年も顔を見てないって仰ったから…」

翔「…何処に居る?」

斗「え?あー、っと……外で話すって言ってましたよ?」

俺はすぐ店のドアを開けた。
斗真の声が背中に届いたけど、説明してる暇は無かった。


外に出て辺りを見渡すけど、智の姿はない。
数歩歩いた場所に街頭の当たらない薄暗い路地がある。
そこからこそこそと話し声がした。

近付くと智の手から引ったくる様に何かを受け取った女性。
その隣には体格のいい男性が居て。

翔「智?…何してる?」

振り向いた智はやっぱり少し怯えが見え隠れする表情を浮かべ、女性はバツの悪そうな顔をしながらも俺に頭を下げた。

『智がお世話になっております。暫く顔を見ていなかったので元気にしてるのかと思いまして』

翔「そうでしたか。…智にはもう身内の方は居ないと思ってましたが…」

『まぁ、そんな事ありませんよ?こうして何時間も掛けて顔を見に来てるんです。少し話すくらいしてもいいじゃないですか』

翔「話だけなら、構いませんよ?お話しするのであれば、店の中を使って頂いても構いませんからどうぞ?」

俺の言葉に、夫婦は顔を見合わせ『…結構です。迷惑になりますから』と慌て始めて。
智は終始俯いたまま。

結局、最後に女性が智に耳打ちをして帰っていった。
俯いたままの智は、少し身体を震わせていて俺はそっと静かに抱き締めた。


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