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愛すると言う事…

第3章 episode 3


少しして落ち着いた智に、今日はもう帰る様に促したけど頷く事は無かった。

智「……ごめん、大丈夫。………ありがと…」

それだけ言うと、また店に戻って行った。


智があの夫婦に何を渡したのかは分からない。
俺の予想では、恐らく……金。

顔も知らない叔父さんの借金を払ってたくらいだ。

今の夫婦がその当事者じゃないかと、俺は予測した。
だからってそれを直接智に聞く事は出来ない。
まぁ智もそう簡単に話す訳ないだろうし。


控え室に戻ってまたフロアの様子を伺った。

智は元々居た、光一のテーブルへ戻っていつもと変わらない様子で客の相手をこなしてる。

戻って来た智に光一はさりげないフォローを忘れず、それもまた客を惹き付ける魅力になっていた。



特に問題もなく混み合う週末の店内を、全員そつなくこなし閉店時間を迎えた。

アフターに向かう奴や最後の客を見送る奴。
俺は斗真と並び、残ってた最後の客を見送った。

翔「お疲れ」

斗「お疲れ様でした」

ざわざわと店内は片付けを始めるスタッフで賑やかになる。

俺は残りの仕事を斗真に任せ智の元へ向かった。


涼「ヘルプが席を外すなんてあり得ないでしょ!」

更衣室から聞こえてくる、涼介の声。
『あれは斗真さんが呼んだんでしょ?』とか、『事情があるなら仕方ないだろ』とか。
数人のフォローする声の中、智の声は当然聞こえては来ず。

涼「光一さんはどう思います?少し甘やかし過ぎじゃないですか?」

亮「……涼介。…お前、何様のつもりだ?」

声を出したのは、光一ではなかった。

亮「いつもいつも聞いてりゃ…この店入って高々3年だろ?光一さんに意見するのは10年早ぇんだよ」

涼「いやでも亮さん!」

亮「黙れ。…光一さんが何も言わないって事は、問題ねぇって事だろ。マネージャーもチーフも智に説教するなら別だけど、何も言って来ねぇだろうが」

ドアを、ゆっくり開けたら全員の視線が俺に向く。

当然智も俺を見たけど、すぐに煙草をくわえて煙をゆっくりと吐き出した。

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