
愛すると言う事…
第3章 episode 3
基本的に海外に毎年全員で遊びに行く恒例行事。
旅費はもちろん店からで、シゲからの予算も上がってる。
小遣いのみで遊びに行けるとあって、全員が毎年楽しみにしてる。
近いうちに細かい話を詰めていかないと…
そんな事を考えながら帰り道を智の様に歩いて帰った。
マンションに帰ると、智はもうベッドの中で。
眠っているのかは分からない。
そっと、頭を撫でて頬にキスをしたら部屋を出た。
シャワーを浴びて戻ると、寝室から智の声がする。
部屋を覗くとやっぱり魘されてて。
額に汗を掻き、眉間の皺は深く顔を歪ませてる。
頭を撫でると無意識に振り払われた。
ゆっくり隣に並び智を抱き締めた。
『大丈夫…大丈夫だ』と、繰り返し言い聞かせる。
それでも弱い抵抗を見せる智に、俺は腕の力を込めた。
いつもより遥かに症状は酷い。
余程だったんだろう。
あの夫婦に会った所為で過去の事も全て思い出させてしまってた。
どのくらいそうしてたのか…
暴れる程ではないにしろ、もがき続けたその身体全身が汗ばんでた。
やっと落ち着いた智が、静かな寝息を取り戻し眠った。
気付けば俺も眠っていた様で。
目を覚ましたら隣の智は居なかった。
ドアを開けると智の後頭部とゆらゆら立ち上る紫煙が見える。
翔「…おはよう」
ソファの隣に座ると『……はよ』と小さく呟いて立ち上がった。
少しずつ、人との関わりに慣れてきた智。
少なからず、店の数人と雑談をするくらいにはなってる。
智「……俺………相当、嫌われてる」
コーヒーを淹れたカップを俺に差し出しながら無表情でそう呟いた。
翔「涼介か?」
智「……ん」
翔「辛いか?」
智「…いや。……辛くはない。光一さんも亮さんも良くしてくれるから」
翔「そうか」
智「……申し訳ないだけ」
翔「何が?」
智「…俺が居る所為で、孤立してくから」
まさか。
智が涼介を庇うとは思ってもみなかった。
そんな風に思ってるなんて、想像もしてなかった俺は思わず言葉を失って。
ポカンとしてしまった所為で智が俺を小さく睨んでた。
『…何だよ』ってそっぽを向いた智が、可愛い。
けど、それを言ってしまえば機嫌を損ねるのは間違いないから。
